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2026.01.30 10:00

金の騰勢が映す「信頼の崩壊」 現実に向き合わない政治に市場は厳しい視線

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金(ゴールド)の価格は、現在の最高値をさらに大幅に上回る水準へと上がっていくかもしれない。背景にあるのは、政府が発行する紙幣(法定通貨)に対する信頼の崩壊だ。投資家は裏切られたという思いを抱いている。

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金価格は米東部時間26日に1トロイオンス5000ドルの大台を初めて超えた(編集注:その後、29日までに5500ドル台に急騰している)。ロンドンの金取引業界のベテランであるロス・ノーマンは、最近の金騰勢の裏にある投資家心理を、いちど破綻した夫婦関係を修復することの難しさになぞらえている。

「あなたが既婚者だとしよう。パートナーが浮気をし、いまはそれを悔いている。さて、あなたはいつ再びパートナーを信頼できるようになるだろうか」。ノーマンは、最高経営責任者(CEO)を務める貴金属ニュースサイト「メタルズ・デイリー」に寄せた記事にそう書いている。

「投資家たちはいま、資産配分に際して同じようなジレンマに直面している」と彼は解説する。「彼らは現行のシステムに裏切られたと感じている。ドル建て資産への信頼が低下し、債務はどんどん積み上がり、政治家は現実に向き合う勇気を欠いているからだ」

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ノーマンはここでは自身による金価格の予測を示していない。この業界に長く身を置くプロだけに、安直な判断は控えている。

一方で、金が発しているシグナルについては、非常に説得力のある筆致で論じている。ノーマンいわく、金はたんなる代替資産やポートフォリオの分散手段ではない。金は、誰かの支払い約束などではない真の価値を持つ「最後の拠り所の資産」として、時代を超えた役割を果たしているのだ。

「金価格の1トロイオンス5000ドル突破は、世界の金融・財政システムの深刻な不調(malaise)を映し出している。この不調は株式のバリュエーション(評価)にはまだ表れていない」と彼はみている。

金の高騰は現行システムへの「不信任投票」

ノーマンはこう続ける。「これは地政学的な緊張や不確実性にとどまる問題ではない。システムそのものへの信頼が根本的に崩れてきていることを意味する」

「金価格の本質はたんなる市場指標ではない。それは一種の『投票機』だ」と彼は喝破する。「ティッカー(表示される相場)は、政治目的の拉致、遠い国での反乱や暴動、北極の資源をめぐる脅しといったニュースに反応して跳ね上がるかもしれないが、根底に流れているストーリーは同じままだ」

「信頼が徐々に損なわれ、債務が自己増殖的に膨張する世界に合わせて、金は再調整している。言うまでもなく、(信頼の低下と債務の自己増殖という)これら2つの動態は密接に関連している」とノーマンは説く。

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翻訳・編集=江戸伸禎

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