ミラノ冬季五輪が映し出す放送の未来 AIとクラウドが変える視聴体験の全貌

kovop58 - stock.adobe.com

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2026年、ミラノ・コルティナダンペッツォ冬季五輪が2月6日にいよいよ開幕を迎える。
この冬季五輪はスポーツの祭典であるとともに、放送技術とデジタル・エンゲージメントの歴史的転換点として記憶される可能性は高く、この発展型が2028年のロサンゼルス五輪でさらに日の目を見ると予想される。

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オリンピック放送機構(OBS)およびオリンピックチャンネルサービス(OCS)のヤニス・エクサルチョスCEOは1月14日、同大会に向けた技術革新の全貌を発表。そこで示されたのは、視聴者体験の劇的な向上と、放送インフラの抜本的な効率化という「二つの革命」だ。ただし、エクサルチョスCEOはこの変革の核心について「我々はイノベーションや技術について明かすが、これはテクノロジーについての話題ではない。世界で最も重要な選手たちの物語を“伝える”話だ。五輪は技術を見せびらかす場ではない。我々は“テクノロジーのナルシスト”ではない」と大前提を述べた。

ここでは14日のラウンドテーブルでの発表と資料に基づき、AIとクラウドコンピューティングがいかにして冬季五輪の風景を表現しようとしているか、事前に紐解く。

視聴体験の再定義〜「没入感」を極める映像技術の最前線

OBSは今回の冬季大会において、いくつもの「史上初」となる映像技術を投入し、スポーツ中継の概念をアップデートしようとしている。

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まずは「FPV(First Person View 一人称視点)ドローン」。冬季競技の中継といえば、固定カメラや上空のドローンからの俯瞰的な映像が主役であった。しかし、ミラノ・コルティナ五輪では、FPVドローンが、屋外の雪上競技だけでなく、史上初めて「スライディングスポーツ(そり競技)」にも本格導入される。同CEOはプレゼンテーションの中で「ミラノではFPVドローンを多用する。(ソチ五輪から使用しているが)より安全でアクションに近い距離まで寄れる新世代の技術を利用する」と説明。

ボブスレー、リュージュ、スケルトンといった競技は、氷のトラックを時速130km以上で滑走する「氷上のF1」。従来のカメラワークでは捉えきれなかったコースの傾斜、氷壁への接近、そして選手が感じるG(重力加速度)の凄まじさを、FPVドローンは選手を背後から追尾することで克明に描写するという。視聴者は、選手と共に氷のチューブを疾走しているかのような、圧倒的な臨場感と没入感を体験できるかもしれない。これは「新しいアングル」の提供にとどまらず、競技の過酷さと選手たちの勇気を、言葉以上に雄弁に伝える手段と思われる。

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文=松永裕司

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