ベネズエラは石油・天然ガス開発で1世紀以上にわたる歴史を有し、現在も進歩している。米国のドナルド・トランプ大統領は、ベネズエラを10年以上にわたって統治してきたニコラス・マドゥロ大統領を排除する決定を下し、自国の石油企業にベネズエラへの復帰を強く促している。
世界最大の重質油埋蔵量を誇るベネズエラのオリノコ油田地帯では、約30年前には1日当たり350万バレルの重質油が生産されていた。この原油はかつて西半球最大の製油所複合施設で精製され、約半分は米国に輸出され、残りは欧州、日本、韓国に出荷された。
しかし2007年、当時のウゴ・チャベス大統領が外資系石油企業に対し、国営ベネズエラ石油(PDVSA)との合弁企業設立を義務付け、PDVSAが株式の60%を取得するよう要求したことで、事態は大きく変化した。エクソンモービルやコノコフィリップスといった世界的な大手石油企業は強制収用により、多額の資産を残したまま同国から撤退した。こうした動きは、ベネズエラのエネルギー産業を衰退させるきっかけになった。石油生産量の減少とともに、油田を支える設備も劣化していった。硫黄分を多く含む重質油の腐食特性により、地上設備の構造的健全性が損なわれ、最終的に設備の大部分が機能しなくなるなど、多額の投資が無駄になった。
こうした中、ベネズエラから撤退した大手石油企業は有望な代替案を見出した。カナダのオイルサンドだ。2003年の原油価格高騰は、カナダの重質油開発計画への大規模な資本投資を促し、この傾向はその後10年以上続いた。比較的短期間のうちに、カナダは重油の世界最大の生産国として台頭した一方で、ベネズエラの役割は著しく縮小していった。
カナダ産オイルサンドへの主要投資家は、エクソンモービル、コノコフィリップス、ペトロカナダ、BP、シェルなど、いずれもベネズエラから撤退した企業だった。不安定な環境下で多大な損失を被ってベネズエラから撤退したこれらの企業が、カナダで進める自社の事業と競合するためにベネズエラに再参入するのは、あり得ないことだ。ベネズエラの油田がかつての重要性を取り戻した場合、カナダとの競争、特に両国が依存している米国の製油所を巡る競争が激化し、カナダ西部アルバータ州産重質油のウエスタン・カナディアン・セレクト(WCS)と米南部テキサス州を中心に産出される高品質なウエスト・テキサス・インターミディエート(WTI)原油の価格差がさらに拡大する可能性がある。こうした動きによってカナダの原油価格が下落すれば、これらの企業が同国で行った投資に悪影響を及ぼしかねない。
このシナリオはありそうにないと思われるかもしれないが、可能性を完全に排除することはできない。例えば、ベネズエラの石油生産に対する支配権の付与を含め、拒否できないほど有利な合意が成立した場合、カナダの利益への潜在的な悪影響を規制することが可能になる。この戦略は、別の企業が市場に参入し、既存のカナダの事業で競合することを妨げる役割も果たすかもしれない。今日の石油・ガス産業は、ベネズエラの生産の最盛期とは大きく異なっている。現在、財務上の決定は主に個人投資家や独立系石油企業ではなく米ニューヨークのウォール街によって行われており、産業の力学が根本的に変化しているため、資本規律が最も重要になっているのだ。



