経済・社会

2026.02.04 13:30

米中関係を予測する「3つの罠」:地経学研究所の一葉知秋

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世界情勢はこの1年間で、大きく動揺した。トランプ大統領が2025年4月2日に発表した「相互関税」によって、累計で125%の関税をかけられた中国は、その直後の4月4日に報復的な措置としてレアアースの対米輸出制限を決定した。8割近いレアアースを中国からの輸入に依存するアメリカにとっては、このような経済相互依存の「武器化」は大きな圧力となり、トランプ大統領は中国との「ディール」を摸索するようになった。

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米中関係は現在、相互依存と「新しい冷戦」の間で大きく揺れ動いている。米中対立の中核的な争点となっているのが、台湾問題である。25年12月4日に発表された、第2次トランプ政権下のアメリカにおける新しい国家安全保障戦略では、従来よりも台湾問題をめぐり踏み込んだ表現を示し、「台湾を奪取するいかなる試みも拒否」する姿勢を示した。このことに対して中国政府は、台湾問題は米中関係における「レッドライン」であり、「外部からの干渉」を控えるよう警告した。ワシントンDCの安全保障コミュニティでは、27年までに中国が台湾に侵攻する可能性がしばしば指摘され、台湾有事の可能性がより深刻に懸念されている。

果たしてアメリカと中国は、戦争をするように運命づけられているのだろうか。そのような不安が高まるなかで、米中関係の将来についてさまざまな予測がなされている。

例えば、ハーバード大学教授で著名な国際政治学者であるグレアム・アリソンは、2017年に『フォーリン・ポリシー』誌に発表した論文のなかで、「ツキディデスの罠」という表現を用いて、米中対立がいずれ戦争に至る可能性が高いことに警鐘を鳴らした。

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すなわちかつて、古代ギリシャの時代にツキディデスがペロポネソス戦争を描いた歴史書のなかで、急速に台頭する新興国においておごりが肥大化し、他方で覇権国では焦りが募ることによって、そのような急速なパワー・バランスの変化と、覇権の交代が、戦争に至る悲劇を論じている。

それに対して、アメリカの歴史家であるアーサー・ウォルドロンは、アリソンの「ツキディデスの罠」の議論を厳しく批判して、衝突を回避しようとして覇権国が新興国の台頭に融和的となり、過剰な譲歩をすることこそが、むしろ戦争に帰結するという「チェンバレンの罠」を論じた。イギリスのネヴィル・チェンバレン首相が、1938年に軍事的に台頭するナチス・ドイツとの平和を希求し、譲歩を繰り返すことでむしろ戦争を呼び込んだ、歴史への教訓である。

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文=細谷雄一

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