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2026.01.25 09:30

インパクト・エコノミー新潮流 「システムチェンジャーの時代」到来へ 

「Forbes JAPAN」は2025年10月、「インパクト・チャレンジ・オブ・ザ・イヤー2025」を開催した。

インパクトスタートアップの新トレンド 

今、日本のインパクトスタートアップは大きなムーブメントを起こしている。インパクトスタートアップ協会の正会員数は現在、325社まで拡大。22年の設立時の23社から約3年間で14倍となった。当時の岸田文雄政権が掲げた「新しい資本主義」ともリンクするカタチで急伸。インパクトスタートアップ協会代表理事である星直人は「中長期では、正会員企業1000社で、1000の『社会課題解決と経済性の両立』を目指す」と語る。こうしたトレンドについて「グローバルな社会課題に挑むディープテック領域への広がり、さらには社会の価値観の変容をとらえた『マイクロ・ソーシャル・イシュー』の解決に対して、大企業連携、自治体連携などをはじめセグメントを横断しながら事業規模を拡大するインパクトスタートアップの登場などの新しい流れも生まれている」とSIIFインパクトカタリストの古市奏文は話す。後者の動きも、社会課題を構造的に解決を目指す「システムチェンジャー」と位置付けることができるだろう。

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一方、世界のインパクトスタートアップへのベンチャー投資は減少を辿っている。Dealroom調査によると、25年の予想投資額は前年比24%減の330億ドルと、ピーク時の21年から4年連続で減少。日本のスタートアップやスタートアップ・エコシステムについても、ハイプサイクルにおける「幻滅期」と称されるなど、マクロ環境についてはネガティブな側面が多い。

そんななか、KIBOW社会投資ファンドインベストメント・プロフェッショナルの五十嵐剛志は、世界のインパクトスタートアップの評価額に注目する。現在の評価額の総額は3.6兆ドルに達し、10年前と比較すると28倍という圧倒的な成長だという。「社会課題解決を事業の中核にすえるビジネスモデルが、一過性のブームではなく、持続的な価値創造の源泉であることを証明している。インパクトの『終焉』ではなく、グローバルな優先順位の『変化』に他ならない。世界ではAIや防衛技術に資金がシフトする一方で、食料や水、平和といった根源的な課題が取り残されている。この構造的な歪みのなかにこそ、日本の真価が問われる舞台がある」(五十嵐)。

「社会的インパクト」の再定義 

「社会的インパクトという概念が転換期を迎えている」と話すのは、東京大学FoundXディレクターの馬田隆明だ。社会的インパクトを語る上で暗黙の前提とされていたグローバリゼーションの進展と自由民主主義的価値観の共有が、昨今の“国際秩序の変容”により変化すると指摘する。世界における「社会」の価値観が変わり、「社会」へのスコープが縮小すれば、従来の社会的インパクトに関わるビジネス市場も狭まり、流通する資金も減少する可能性があるという。例えば、脱炭素における世界でのコンセンサスの変化に伴って、環境技術への投資に影響が出始めているという。「だからこそ、今、『社会とは何か』から問い直し、そのうえで社会的インパクトを構築しなければならない。より良い社会像を提案し、社会を再構築していく試みがこれまで以上に重要になる」(馬田)。

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文=山本智之

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