クラフトはトレンドで終わらない 今人が求める「贅沢」とは

「suzusan – Colors in mind」では、絞り染め制作のプロセスも展示された

「suzusan – Colors in mind」では、絞り染め制作のプロセスも展示された

2025年の訪日外国人旅行者が4270万人だったことが発表された。日本の文化やその背景にある価値観への関心はますます高まっているが、他方、日本の地域のものづくりは静かに縮小していっている。

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江戸時代から続く伝統工芸「有松絞り」の5代目、村瀬弘行は、08年にドイツ・デュッセルドルフでブランド「suzusan(スズサン)」を創設。海外を拠点に日本のものづくりに携わりながら、双方の橋渡しをするような取り組みを続けてきた。25年末に和光本店の地階「アーツアンドカルチャー」で開催された「suzusan – Colors in mind」もそのひとつと言えるだろう。

国内外を行き来する目には、人々は今、何に価値を置いているように映るのか。ものづくりやクラフトが注目されているのは一過性のものなのか? 「suzusan」村瀬CEOと「和光」庭崎紀代子社長に聞いた。

──「グランドセイコー」などのグローバルマーケティングを担当されてきた庭崎さんが思う、海外からも高く評価される日本ブランドの共通点について教えていただけますか?

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庭崎:私たちは日本ブランドだから優れているという見方はしていません。海外にも素晴らしいものづくりをするブランドは多くあり、例えば、スイスの時計ブランドには、それぞれにストーリーやオリジナリティがあります。

こと日本に目を向け、和光がご一緒したいと思うのは、生真面目でありながらも柔軟性のある人やブランドでしょうか。日本人の気質なのか、自らは語らずとも、職人の方は話を聞けば知識やこだわりがあふれ出てきます。大量につくることよりも、ひとつひとついい物をつくろうという姿勢があります。

それでありながら、頑なすぎない。例えば、400年以上受け継がれてきた有松絞りの技術や商流があるなかで、村瀬さんがデュッセルドルフを拠点にsuzusanを展開されるのも、とても柔軟な判断ですよね。

uzusan CEO兼クリエイティブディレクターの村瀬弘行と和光代表取締役社長の庭崎紀代子
suzusan CEO兼クリエイティブディレクターの村瀬弘行(左)と和光代表取締役社長の庭崎紀代子(右)

村瀬:僕らも「日本だからいい」とは思っていなくて、互いの文化を尊重し合うことが重要だと思っています。suzusanでは、異なる文化圏に向けてものづくりを届けていくうえでのブランドのペルソナを「キッチンにお醤油のない人」と定めています。日本の文化にあまり馴染みのない人たちです。

日本で日本人だけで考えて商品をつくっても、外国の人には使い方がわからない。デザインや発信も同じです。日本とは異なる文化にどう組み込んでいただくかを考えながらブランドを展開しています。

2008年にブランドを立ち上げてから、これまで27カ国で販売してきました。売上比率は75%がヨーロッパ、12〜3%が北米、それ以外が日本やアジア。ですが、僕たちは世界で戦いに行くつもりでビジネスを展開していません。僕たちのもつ文化を手土産に、世界の人たちと友達になりにいく感覚です。

老舗のラグジュアリーブランドのように、トップダウンで価値を押し付けるようなやり方ではなく、僕らのような小さな町に根ざした文化を紹介する感覚。それは、日本という場所が持つ、特有の歴史や文化的な立ち位置があるからこそ、説得力がある気もしています。

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文=守屋美佳 写真=若原瑞昌 編集=鈴木奈央

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