映画

2026.01.27 15:00

年間予算約2.8兆円を投入、「ネトフリ」作品の最終決定権を握る“ストリーミングの女王”とは?

2025年11月5日、Netflixの「The Beast in Me」プレミア上映イベントに参加した同社CCOベラ・バジャリア(lev radin/Shutterstock.com)

2025年11月5日、Netflixの「The Beast in Me」プレミア上映イベントに参加した同社CCOベラ・バジャリア(lev radin/Shutterstock.com)

フォーブスが毎年発表する『世界で最も影響力のある女性100人(Forbes World’s Most Powerful Women)』は、単なる知名度ランキングではない。「資産規模」「メディア露出度」「影響力」「活用される力」の4指標を基に、政治、経済、慈善活動、エンターテインメントの各分野から「世界を動かす決定権」を持つ女性リーダーを選出したリストだ。ここでは、国家運営を担う政治家や巨大テック企業のトップと並び、世界規模で影響力を行使する女性が名を連ねる。

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昨年12月、そのフォーブス『世界で最も影響力のある女性100人』2025年版で60位となったのが、動画配信大手ネットフリックスで最高コンテンツ責任者(CCO)を務めるベラ・バジャリア(55)だ。年間180億ドル(約2.8兆円。1ドル=154円換算)という巨額予算を基に、『イカゲーム』『ウェンズデー』『ブリジャートン家』といった世界的ヒット作を統括してきた彼女は、今やストリーミング時代の覇権を握るキーパーソンといえるだろう。もしネットフリックスによるワーナー・ブラザース・ディスカバリーの買収が実現すれば、バジャリアは名実ともにハリウッドで最も影響力のある女性エグゼクティブとなる可能性がある。

世界で3億人以上が視聴する作品の最終決定権を握る、“ストリーミングの女王”

ベラ・バジャリアは、著名なCEOでも国家元首でもないが、撮影スタジオでは、自然とすべてが彼女を中心に動き出す。その様子は、彼女が2023年からCCOとして製作を統括するネットフリックスのドラマ『BEEF/ビーフ』の新シーズンを撮影中のロサンゼルスのスタジオでもはっきり表れていた。

2024年のエミー賞で主要8部門を受賞した『BEEF/ビーフ』は現在、キャストを一新して第2シーズンの撮影が進んでいる。スタジオではその日、ショーランナーのイ・ソンジンや制作会社A24の幹部とともに運転手付きのSUVで到着したバジャリアを迎えようと、出演者やスタッフが次々と集まってきた。

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グレーのゆったりとしたニットにレザーパンツという装いのバジャリアは、ミス・ユニバースのインド代表にも選ばれた経歴にふさわしい落ち着いた身のこなしでスタッフと挨拶を交わす。そして、第2シーズンの撮影開始を祝ってイ・ソンジンに小さな贈り物を手渡した後、自身の名前が書かれたディレクターチェアに座り、インカムを装着した。

現在バジャリアは、ストリーミングの女王として、世界で3億人以上が視聴するネットフリックス作品の最終決定権を握っている。

ネットフリックス作品、第83回ゴールデングローブ賞で最多の35ノミネートを獲得

彼女の戦略は、着実に成果を上げている。ネットフリックスは、12月8日に発表された第83回ゴールデングローブ賞で、映画作品とドラマ作品(リミテッドシリーズ)を合わせて合計35の最多ノミネートを獲得した。そこには、ギレルモ・デル・トロ監督による『フランケンシュタイン』、『KPOPガールズ!デーモン・ハンターズ』といった映画に加え、『アドレセンス』などのドラマが含まれていた。

「これまで私を突き動かしてきたのは、ビジネスや新しい取り組みを形にしたいという好奇心だった」と、バジャリアはフォーブスに語る(なお、ワーナー・ブラザースは『罪人たち』や『ワン・バトル・アフター・アナザー』といった映画や、HBOのドラマ『ホワイト・ロータス/諸事情だらけのリゾートホテル』で2番目に多い31ノミネートを獲得した)。

ネットフリックスがワーナー・ブラザース・ディスカバリー買収を計画、バジャリアの権限が拡大する可能性

だが、これはまだ始まりにすぎない。バジャリアはすでに、年間180億ドル(約2.8兆円)をコンテンツ制作に投じ、50言語、190カ国に向けた作品展開を指揮している。720億ドル(約11.1兆円)規模のワーナー・ブラザース・ディスカバリー買収が規制当局の承認を経て実現すれば、ネットフリックスはHBOやHBO Maxに加え、『ハリー・ポッター』やDCコミックスといった強力なフランチャイズを手にすることになる。これらは、『ウェンズデー』『KPOPガールズ!デーモン・ハンターズ』『ブリジャートン家』『アドレセンス』などの、現在バジャリアが統括するネットフリックスの幅広い作品群に加わる。そうなれば、フォーブス『世界で最も影響力のある女性100人(Forbes World’s Most Powerful Women)』2025年版で60位に入ったバジャリアが、近い将来、ハリウッドで最も重要なエグゼクティブになる可能性が出てくる。

TKOのエグゼクティブチェア兼CEOで、WMEグループの会長でもあるアリ・エマニュエルは、バジャリアの仕事ぶりを次のように評する。「彼女は、1つや2つどころか、10件以上の案件を同時に回しながら、常に冷静さを失わない。それが本当に驚くべき点だ。ある瞬間はボクシングの話をしていて、次の瞬間にはドラマ、映画、スターの話になる。この人が把握していないことはないんじゃないかと思うほどだ。正直、圧倒される」。

エマニュエルは、プロレス番組『WWE Raw』(日本では未公開)をネットフリックスに移行させる約50億ドル(約7700億円)規模の契約を、バジャリアとともにまとめ上げた人物でもある。

パラマウントによる敵対的買収提案

もっとも、前途はなお不透明だ。トランプ大統領は先月7日、ネットフリックス共同CEOのテッド・サランドスを称賛する一方で、統合後の巨大メディア企業が持つ市場シェアへの懸念にも言及した。翌8日には、パラマウントがワーナー・ブラザースに対し、CNNやディスカバリー・チャンネルなどを含めた額として、ネットフリックスの提示額を約180億ドル(約2.8兆円)上回る敵対的買収提案を行ったと発表した(注:ネットフリックスは当初、支払いを現金と株式で行うとしていたが、1月20日、全額を現金で支払うと発表した。ネットフリックスが買収に失敗すると、バジャリアの栄光の未来が陰る可能性がある)。

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翻訳=上田裕資

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