AIフロンティアが求める現場とハードウェア:パートナーシップの新潮流
産業AI革命時代に大切になるのがパートナーシップだ。シーメンスは先述のエヌビディアに加え、マイクロソフトとITおよびOT(運用技術:Operational Technology)のブリッジ強化を発表し、メタ(Meta)とはRay-Ban Meta AI Glassesを、現場作業のAR/AI支援として産業用途へ最適化する構想を示していた。さらにペプシ(PepsiCo)は、産業AIの適用例として、物理実装前にデジタルツインを用いた製造シミュレーションを回し、立ち上げ段階で発生し得る課題の多くを事前に検知・潰せるようになった工場の変化を強調していた(今後、世界の工場へ展開する流れだという)。シーメンスのローランド・ブッシュCEOが繰り返し強調していたのは、産業AI革命時代に必要なのは「ドメイン(現場)のノウハウ」を持つ企業の存在だ。ドメインを知るシーメンスのもとで、エヌビディアやマイクロソフト、Metaが先端技術の実装先を得ている構図とも言える。
産業AI革命時代のパートナーシップで、強烈な「ショー」を行ったのはレノボだ。ラスベガスの名所「Sphere」で開催したレノボのステージには、エヌビディアのジェンスン・ファン代表、Intelのリップブー・タン(Lip-Bu Tan)代表、AMDのリサ・スー(Lisa Su)代表、クアルコムのクリスティアーノ・アモン(Cristiano Amon)代表が登壇し、GPU/CPUを含むAI時代の計算基盤を担うフロンティア・プレイヤーを一堂に並べた。そこでレノボは「彼らと一緒にこれからのAI世界の基盤を作る」というメッセージを、Sphereという没入体験の場で提示してみせた。加えて、F1やFIFAのシステムサポート、会場であるSphere Studioの基盤にもレノボが関与していることを示し、ThinkPadを提供するPCメーカーの枠を超えて、AI時代の旗手へ踏み出す姿勢を強く印象づけた。テクノロジー領域で圧倒的なグローバルメッセージを伝えたい企業にとって、来年以降、CESでSphereを活用した発信は有力な選択肢になり得るだろう。

日本企業が持つ「身体」の価値。日立が示す産業AI実装の可能性
ここまでで言えるのは、産業AI革命の時代に、シーメンスやレノボのように産業の現場(工場)やハードウェアを持つ企業は、AIフロンティア・プレイヤーにとって不可欠な存在になっているということだ。エヌビディアのチップやデジタルツインがあるだけでは、物理世界の現場は動かない。ハードウェアと現場を知る企業と結びついて初めて、産業AIは実装へ進む。エヌビディアのCES 2026発表でも、自動運転向け(Level4対応)構想を車両側(例:メルセデスの車種)と組み、地域・時期を区切って市場展開していく話が出ていたが、まさに現場(プロダクト)と組むことが前提になるということだ。
その点で、日立は産業AI革命を担う旗手になり得る展示を行っていた。ポイントは、AIという「脳」だけでなく、鉄道車両や電力設備といった「身体」側まで視野に入れ、現場の運用に落とし込む姿勢を前面に出していたことだ。次世代AIソリューション群「HMAX(HYPER MOBILITY ASSET EXPERT)」を掲げ、鉄道車両や電力網、産業設備などの大量データを統合的に分析し、運用の高度化を狙う構想を示していた。加えて日立は、鉄道では車両そのもの、電力領域でも受配電設備(高圧受電盤/低圧電源盤など)を製品として持ち、さらにエヌビディアとの協業も進めている。AIと実装対象(車両・配電)を組み合わせられる点は、産業AI革命における強いポジションになり得るだろう。
ただし残念なのは、この話が展示ブースで丁寧に聞き込まないと見えてこないことだ。約6900のメディア枠参加者が集まるメディアデイを、日立こそが産業AI時代の旗手である、と世界へ届ける場として、もっと活用してほしいと感じた。



