サイエンス

2026.01.18 18:00

自分の巣に「身代わり」を仕掛け、捕食者から身を守るクモ

ゴミグモによって作られた「おとり」(spiderman (Frank) )

ゴミグモによって作られた「おとり」(spiderman (Frank) )

常に捕食される危険がある熱帯林の下層では、生き延びるために驚くべき戦略が求められる。このような環境に生きる小さな生物の中に、目立たないクモの仲間、ゴミグモ属(学名:Cyclosa)がいる。体長わずか数mmのこのクモは、自然界でも飛びぬけて独創的な護身術を身につけている。

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その方法は、逃げることでもないし、反撃することでもない。ゴミグモは、自らの巣に「幻」を織り込むのだ。2025年に学術誌『Ecology and Evolution』に発表された研究において、初めて正式に報告されたこの幻は、とてもよくできている。

この発見が真に画期的なのは、ゴミグモが自分の巣に装飾を施す点ではない。そのような行動は、円網(中央から放射状に張った糸を、同心円状に張った糸でつなぐ形状のクモの巣)を張るクモの多くにみられる。驚くべきは、ゴミグモ属の一部の種が、そうしたゴミの装飾を、自分の身代わりになる「おとり」の形にして巣にほどこし、潜在的な捕食者をだますことが明らかになった点にある。

これらの巧みな生存戦略は、クモなどの節足動物が見かけ以上に複雑であることを証明している。この8本足のエンジニアについて、それなりに詳しいと思う読者は、20問からなる「クモの知識テスト」で自信のほどを試してみよう。

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先に紹介した2025年の研究によれば、ゴミグモがこの独創的な技を駆使する方法は以下のとおりだ。

ゴミグモの日常生活

ゴミグモ属は、コガネグモ科(学名:Araneidae 英名はorb-weaver spiders)に属するクモのグループで、熱帯・亜熱帯地域などに広く生息する。英語ではしばしば「トラッシュライン・オーブウィーバー:trashline orbweaver(ゴミを帯状に付着させた円網を張るクモ)」と呼ばれる。

コガネグモ科の近縁種と同様に、ゴミグモ属は生活の大半を、滑らかなクモの糸でできた巣の中心に身を置いて過ごす。そこで彼らは、ハエやブヨなどの小さな昆虫が、ねばつく糸にうっかり絡まるのを辛抱強く待つ。

しかしゴミグモの巣は、円網を張るクモに典型的にみられる「車輪」の形状とは微妙に異なる。多くのゴミグモは、一見するとゴミだまりのように見える構造物を築く。そこには、獲物の残骸、葉の断片、植物片、その他のかけらが、帯状の装飾として織り込まれている。

これらの「ゴミリボン(trashlines)」は長年、単なるカモフラージュとして、捕食者からクモの姿を見えにくくする機能を果たすと考えられてきた。実際、ゴミグモ属のギンメッキゴミグモ(学名:Cyclosa argenteoalba)やギンナガゴミグモ(学名:Cyclosa ginnaga)などでは、体色とシンプルな糸の装飾を利用して自らを周囲に溶け込ませている。これにより、寄生バチなどの捕食者からの攻撃を減らすことができるわけだ。

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翻訳=高橋朋子/ガリレオ

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