災害対応能力の維持に向けた議会の動き、人員削減に関する警戒感
FEMAの改革をめぐる議論が続く一方で、議会は人員削減に一定の歯止めをかける姿勢を見せている。削減への懸念は、上院がまとめた2026会計年度の国土安全保障関連歳出法案の草案でも示された。この草案には、災害対応の中核を担うために必要な人員を削減する形で、FEMAが予算を使うことを認めない条項が盛り込まれている。具体的には、資金を「災害対応や復旧、被害の軽減を図るうえで必要な人員水準を引き下げる形で使用してはならない」と明記している。
上院の歳出法案の文言からは、政府全体で組織再編が進む中でも、災害対応能力については例外として維持すべきだとの考えが読み取れる。
災害対応業務を継続するため、FEMAが機能を維持するよう求める
この法案はまた、災害対応業務を継続するために、「支援金の処理や復旧事業の監督、被害軽減補助金の運営」といった機能をFEMAが維持するよう求めている。歳出法案の文言は恒久的に人員数を固定するものではないが、人員削減によってFEMAの法定任務が果たせなくなることへの超党派の警戒感をにじませている。
フェデラル・ニュース・ネットワークの報道によれば、共和党を含む上院議員の間で、FEMAやサイバーセキュリティ・インフラ安全保障庁(CISA)など国土安全保障省傘下の機関で進む人員削減に不安が広がっている。問題視されているのは組織の規模ではなく、大規模災害や重大事案が発生した際に、現場で実際に対応できる体制が維持されているかどうかだ。
災害対応や復旧の責任の多くを州に委ねる方針の限界
今回提案されている人員削減は、災害対応や復旧の責任の多くを州に委ねようとするトランプ政権の方針とも合致する。FEMAに改革が必要だという点では多くの政策担当者の見方は一致しているが、人員を減らすだけでは、州レベルに存在する構造的な空白は埋まらない。
多くの州は、FEMAが担ってきた機能を大規模に代替するだけの法的権限や財政的余力を持っていない。連邦政府が大規模災害時の支援の枠組みを定めたスタッフォード法の下では、公的支援や個人向け援助、被害軽減策に数十億ドル規模の資金が投じられる仕組みになっている。こうした対応を、被害が広域に及ぶ災害や、災害が相次ぐ状況の中で、州が短期間に引き受けるのは難しい。
また、政府の人員削減の影響は、地域の労働市場にも波及する。連邦政府全体で進む雇用削減は、状況をさらに複雑にしている。「こうした削減が重なれば、失業者が労働市場にあふれる。州がその全員を吸収できるはずがない。結果として、この分野から完全に離れてしまう人も出てくる」と、ある地域の緊急事態管理担当者は語る。
流出した人材や専門的知見は、簡単には取り戻せない
そうした人材流出による知識や経験の喪失は、簡単には取り戻せない。緊急事態管理の専門的知見は、長年にわたる複数の災害対応を通じて蓄積されるものだ。一度現場を離れた人材は、後から体制を立て直そうとしても、簡単には戻らない。このまま人材流出が進めば、いざ大規模災害に直面したとき、問われるのはFEMAの改革の是非ではなく、制度が機能するだけの体制が確保されているのかどうかだ。


