「世界を変える30歳未満」を部門ごとに30人選出するアワード企画、フォーブス『Forbes 30 Under 30』。次世代をけん引する若い才能に光を当てるアワードで、米『Forbes』が2011年12月より開催し、世界的に注力している企画だ。米国版をはじめ、欧州版、アジア版、アフリカ版など、25カ国・地域で開催し、世界規模へと成長している。Forbes JAPANでも2018年より「Forbes JAPAN Forbes 30 Under 30」を開催しており、8年間で総計330人を選出してきた。
本稿では、フォーブス「30 Under 30」2023年版の「フード&ドリンク」部門で選ばれたラシャド・ホサイン(31)を紹介する。ホサインが率いるRyzeは2025年、オンライン販売だけで3億ドル(約471億円。1ドル=157円換算)以上を売り上げた。そして間もなく、全米1900店以上の量販店「ターゲット(Target)」で販売を開始し、本格的なマスマーケット展開に踏み出す。
マッシュルームコーヒー市場の成長と、Ryzeの躍進
1940年代に登場した「マッシュルームコーヒー」は、その後75年以上を経て、ようやく飲料業界の「次の主役」に浮上した。その最新のブームを牽引するブランドとして頭角を現しているのがRyzeだ。カリフォルニア州とネバダ州で栽培された6種類の有機キノコに、メキシコ産のコーヒー豆をブレンドした同社の製品は、従来のコーヒーとは異なる価値を打ち出している。
Ryzeは、創業者兼CEOのラシャド・ホサインと、最高マーケティング責任者(CMO)のアンドレ・ヴェルナーが2020年に立ち上げたボストン拠点の新興企業だ。2025年の年商は、保守的な見積もりでも前年比50%増の推定3億ドル(約471億円)超に達したという。2023年にフォーブス「30 Under 30」に選ばれたホサインが率いる同社は、これまで1度も実店舗で商品を販売することなく成長を遂げてきたが、現在大きな転換点を迎えている。
全米1900店以上の量販店チェーン「Target」に進出、実店舗販売に挑む
今や米国で最も売れるマッシュルームコーヒーブランドとなったRyzeは、間もなく全米1900店以上の量販店「ターゲット(Target)」において、販売を開始する。従来型のコーヒーブランドが占めてきた棚に入り込み、3種類の限定ラテフレーバーに加え、主力のインスタントコーヒーやスティックタイプの商品を展開する。
ホサインは、「この5年間の実績によって、コーヒー業界の常識を根底から覆せると確信している。量販店への進出で、本格的に勝負に打って出る」と語る。CMOのヴェルナーも、「実店舗の棚で、できるだけ多くの消費者に商品を手に取ってもらいたい」と話す。
2020年、「従来のコーヒーに代わるより健康的で免疫をサポートする選択肢」として誕生した低カフェイン飲料であるRyzeは、過去5年間にわたり主にオンラインで数百万人に購入されてきた。購入者の多くは月額80~100ドル(約1万2600円~約1万6000円)の定期購入を選んでいる。6オンス(約170グラム)入りのコーヒー1袋の価格は45ドル(約7100円)だ。Ryzeはリピート購入率を公表していないが、熱心なファン層の存在を示す指標であるフェイスブックグループには約50万人が参加している。
サンフランシスコ拠点の調査会社Grand View Researchによると、Ryzeと主要な競合のEveryday Dose、Mud\Wtr、Four Sigmatic、Omを合わせた、マッシュルームコーヒー市場の年間小売売上高はすでに10億ドル(約1570億円)規模に達している。
こうしたブランドは、免疫力や消化機能の向上などをうたう「機能性飲料」市場の拡大も後押ししている。この市場の年間売上高は昨年500億ドル(約7.85兆円)に達し、2027年には620億ドル(約9.73兆円)まで成長すると見込まれている。ホサインとヴェルナーは、初の小売パートナーにターゲットを選んだことで、「機能性コーヒー」をより幅広い消費者層に届けられると考えている。
Ryzeは、製品にブレンドされたさまざまなキノコ(ライオンズメインや冬虫夏草、霊芝、ターキーテール、シイタケ、エリンギなど)の成分が、エネルギーの持続や集中力のサポート、腸内環境の改善につながると訴求している。ホサインとヴェルナーは、こうした成分を消費者の日常生活に自然に取り入れてもらうことを狙っている。ただし、キノコ自体は抗酸化物質が豊富で、特定のキノについてはその効能を示す科学的研究があるが、マッシュルームコーヒーの医学的効果を裏付けるヒトでの臨床試験結果は存在しない。
Ryzeの成長はコーヒー価格の高騰とも重なった。コーヒーの価格は、2025年末時点で最大50%上昇したが、その背景には干ばつによる供給減少に加え、米国がコーヒー生産国に課している関税の影響が挙げられる。



