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2026.01.19 16:00

【30UNDER30は今】1500億円市場に拡大、「マッシュルームコーヒー」はブームかバブルか?

Rosamar/Shutterstock.com

自己資金でRyzeを立ち上げ、泥臭い顧客対応で基盤を築く

Ryzeの立ち上げにあたり、2人はそれぞれ自己資金から1万5000ドル(約236万円)を投じ、ヴェルナーの家族や友人が7万ドル(約1100万円)を出資した。ブランドは2020年6月にローンチされたが、初年度の売上高は12万ドル(約1880万円)にとどまった。それでも、2人は落胆しなかった。

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「正しいやり方はこれだという前提を持たないことが重要だった」とヴェルナーは語る。「自分たちのビジネス、このカテゴリー、そして顧客にとって何が機能するのかを見極め、それに全力で賭ける。それだけだった」。

パンデミック期には2人は顧客に直接電話をかけたり、テキストメッセージを送り、インスタグラムのDMでもやり取りを続けた。当時は、顧客との会話のために、1人あたり約20台の携帯電話を使い分けていたという。「とても泥臭い売り込み方だった。資金がほとんどなかったからだ」とホサインは振り返る。

2人は2021年には、PS27 Venturesとニューヨーク拠点のReign Venturesからプレシードラウンドで100万ドル(約1億5700万円)を調達。この資金によって、フェイスブックやインスタグラム広告など顧客獲得施策に投じられる余力が生まれた。2021年末には売上高が290万ドル(約4億5500万円)に達した。

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その後、事業規模を拡大したRyzeは、黒字化を達成した。そしてホサインとヴェルナーは利益の1%を、小学校におけるメンタルヘルス支援を訴える慈善団体に寄付し始めた。しかし2025年、同社は寄付を停止し、その団体との協業も終了している。Ryzeはこの判断について、「事業の拡大に伴い、最も意味のある形で社会的インパクトを生み出す方法を再評価した結果だ」と説明している。

2023年の売上高は推定約157億円を突破、2024年も急成長が続く

ホサインがフォーブス「30 Under 30」2023年版の「フード&ドリンク」部門に選ばれた時点で、Ryzeの顧客数は3万人を超え、2022年の売上高は約1800万ドル(約28億2600万円)に達していた。累計調達額も、PS27 Ventures、River Bay、シカゴ拠点の11 Tribesからの出資を含め、200万ドル(約3億1400万円)に達していた。

Ryzeの売上はその後も拡大を続け、2023年1月にはコネチカット州拠点のValency Capitalから追加で215万ドル(約3億3800万円)を調達した。これを追い風に売上は一気に10倍へと伸び、2023年の売上高は推定1億ドル(約157億円)を突破した。

この急成長は2024年も続いた。同年、アマゾンでの販売を開始したRyzeは、瞬く間に同サイトで最も売れるコーヒー代替飲料となった。フォーブスは、Ryzeの2024年の売上高を2億ドル(約314億円)超と見積もっている。ただし、勢いを増したのは同社のみではなく、主要な競合も同様に売上を伸ばしている。

主要な競合ブランドが台頭し、売上高を伸ばす

2021年創業のEveryday Doseの2025年の売上高は、推定1億ドル(約157億円)に達した。また、2024年初めにターゲットでの販売を開始したMud\Wtrの昨年の年間売上高も推定6000万ドル(約94億2000万円)に上った。Mud\Wtrは2018年以来、コーヒー豆を使わないマッシュルーム飲料を複数のフレーバーで展開してきたが、12月に初めてコーヒー豆を使用した新商品を投入した。

別の競合Four Sigmaticも、2012年にマッシュルームコーヒーを立ち上げて以降、年商5000万ドル(約78億5000万円)超を稼ぎ出しているとみられる。ロサンゼルス拠点の同ブランドは、ホールフーズ、スプラウツ、アマゾンで最も売れているコーヒーブランドの1つで、年内には数百店舗での取り扱い開始を控えている。

Four Sigmaticのテロ・イソカウピラCEOは、「オンライン発のブランドには、非常に攻めた形でスケールしてきたところが多い」としたうえで、「我々は米国の実店舗流通に注力してきた。我々にとっては、巨大なタンカーのようなモデルのほうが合っている」と語る。

科学的根拠を欠く主張や誤った情報がSNSで拡散、バブルへの懸念も高まる

イソカウピラはまた、マッシュルーム飲料がニキビや腹部脂肪の軽減に効果があるといった、「科学的根拠を欠く主張」がSNS上で拡散されている点を問題視する。そうした誤った情報が、免疫サポート、エネルギー向上、ストレス管理、腸内環境改善といった、長年の研究に裏付けられた効能に関する主張の信頼性を損なうことにつながると彼は言う。「オンラインブランドは、誰にも気づかれないまま売上が数億ドル(数百億円)規模に膨らむことがある。その結果、誤った広告表現が、米連邦取引委員会(FTC)、食品医薬品局(FDA)の監視をすり抜けてしまうことがある」とも指摘した。なおRyzeは、医療行為をうたう形で製品を販売していないとし、インフルエンサーを含む広告表現の監視も行っていると主張している。

「競争が激しくなること自体は悪くない。ただし消費者を誤解させ、不信感を生むことには強い懸念がある」とイソカウピラは語る。彼が指摘するように、投資家、流通業者、業界コンサルタントの間では、マッシュルームコーヒーが「流行の典型例、あるいは崩壊を待つバブルではないか」との見方も上がっている。

それでもホサインとヴェルナーは、競争を乗り越えられると信じており、「Ryzeには日々の習慣として飲み続ける忠実な顧客がいる」と強調する。

「誰かの日常に深く入り込み、これがなければ1日が始まらないというブランドを目指している」とヴェルナーは語る。「顧客は毎日、必ず1杯のRyzeを必要としている。欲しいから飲むし、必要だから飲むのだ」と彼は続けた。

forbes.com 原文

翻訳=上田裕資

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