約1570億円規模のブランドへの可能性と、売却失敗の裏側
こうした追い風を考えれば、Ryzeは10億ドル(約1570億円)規模のブランドへと成長する軌道に乗っているようにも見える。フォーブスは、仮に同社が買収された場合、その評価額は売上高の約2倍の6億ドル(約942億円)程度になると試算している。共同創業者2人は、Ryzeの株式の合計60%を保有していると推定できる。同社がこれまで公開した資金調達額は、フロリダ州拠点のPS27 VenturesとRiver Bay Investmentsを含む投資家からの415万ドル(約6億5000万円)にとどまっている。
利益率の低さと定期購入の解約率が懸念点
事情に詳しい関係者によれば、Ryzeは2025年に売却を模索していたものの、有力な買い手は現れなかったという。この点は、同社の長期的な成長シナリオに疑問符を投げかけている。フォーブスの推計では、同社はごくわずかな利益しか生んでおらず、2025年のEBITDAマージン(利払い・税引き・償却前利益率)はわずか3%と見込まれている。
業界の投資家やコンサルタントには、Ryzeがオンラインでのマーケティングや顧客獲得に過剰な資金を投じていると見る向きも多い。そうした手法の結果、最終的に定期購入を解約する顧客が相次ぎ、「異常なほど解約率が高い」と指摘する声もある。また、顧客が解約の際に、極端に煩雑な手続きを強いられていると指摘する関係者もいる。これに対しRyze側は、「摩擦を減らし、分かりやすさを高める取り組みを続けている」と説明し、「定期購入を簡単に管理できるよう、継続的に改善を重ねている」としている。
ある投資家は同社の戦略を「成長至上主義」だと評し、「長期的な持続性や顧客維持を重視する立場から見れば、使わない手法が多かった。数字自体は魅力的でも、継続率や顧客満足度が伴っていれば価値はもっと高かったはずだ。にもかかわらず取引が成立しなかったことが、すべてを物語っている」と語る。
ホサインは「売却を急ぐ考えはない」と語り、Ryzeが現在、長期的なブランドロイヤルティの構築に注力していると強調した。「我々がやろうとしているのは、人々の役に立ち、世代を超えて支持されるブランドを築くことだ。本当に人々の気分や体調を良くする商品を届けていきたい」。
「幼い頃から、食に強い関心を持っていた」創業者の原点と初期の成長戦略
ホサインは、バングラデシュから米国に移住した両親のもと、ボストンの1ベッドルームの小さなアパートで育った。両親は複数の仕事を掛け持ちしながら生計を立てていたという。「子どもの頃は本当にお金がなく、食べ物にも事欠くことがあった」とホサインは振り返る。「それでも両親は、胸を張って生きるために必要なことをすべて教えてくれた。言葉も十分に分からない新しい国で、私により良い人生を与えようと、毎日必死に働く姿を見て育った」。
そうした両親の姿は、彼に「何か特別なことを成し遂げたい」という思いを芽生えさせ、やがて執着にも近いものになっていった。「私にとって食べ物は常に大きなテーマだった。幼い頃から、食に強い関心を持っていた」とホサインは語る。ハーバード大学で経済学を学んだ彼の関心は、栄養学へと広がり、卒業後はクラフト・ハインツでブランドマネジメントに携わり、マクスウェル・ハウスを含む同社のコーヒー事業を担当した。
ハーバード時代の親友で、応用数学を専攻し、同じく2016年に卒業したヴェルナーは、ホサインが当時のコーヒー業界の「イノベーションの欠如」に失望し、“健康的”とされるコーヒーの選択肢の少なさに不満を募らせていく過程を間近で見ていた。ホサインがクラフト・ハインツを辞めて独自ブランドを立ち上げると、ジュリアード音楽院でチェロを学んだヴェルナーも合流し、「人々がより健康に生きる手助けをする」ことを目標に掲げた。
「当時の我々は、1日に10杯から20杯もコーヒーを飲むほどの重度のカフェイン中毒だった」とホサインは振り返る。「もっと良い選択肢が必要だと2人とも感じていた。アダプトゲンやハーブ、自然由来のエネルギー源を探す中で、偶然キノコに行き着いた」。


