太陽から約1億5000万kmの距離にあり、世界人口約82億人が暮らす地球が属する太陽系は、銀河系の中心から約2万7000光年離れた位置で、誕生から約46億年にわたり銀河系中心の周りを公転運動している。地球を含む惑星と氷微惑星群のエッジワース・カイパーベルトがある領域を越えると、太陽系は謎に包まれた外縁部のオールト雲へと広がっている。オールト雲は遠方の彗星群が球殻状に分布する領域で、太陽から最大3光年先まで達している。
それでも、これが太陽系近傍領域の末端というわけではない。
太陽系は時速80万kmで天の川銀河(銀河系)内を移動しており、古代の恒星の爆発で形作られたガスや塵(固体微粒子)が無秩序に広がる領域を通過している。そうした領域の1つが局所星間雲(LIC)だ。周囲の空間に比べて水素ガスがやや高密度に集まった領域で、太陽系は現在このLICの中を移動している。LICの外側には超新星で加熱された高温ガスのより大きな低密度領域である局所バブル(泡)が広がっている。人類を含む地球の生命の生息地であるこの宇宙構造を理解することが重要なのは、数百万年にわたる地球の生命の進化に影響を及ぼした可能性があるからだ。
古代の遭遇の痕跡
天文学誌The Astrophysical Journalに2025年12月に掲載された論文は、約440万年前に高温の大質量星2つが太陽系のすぐ近くを通過したことを明らかにしている。太陽からわずか30~35光年しか離れていないところを、おおいぬ座のイプシロン星(固有名アダラ)とベータ星(ミルザム)がかすめるように通り過ぎたという。天文学的には、これは近接遭遇だ。
この接近通過により、検出可能な痕跡が残されたと、論文は指摘している。アダラとミルザムからの強烈な紫外線放射によって、周囲にあるガスであるLICの水素原子とヘリウム原子から電子がはぎ取られ、電離した状態になったのだ。低密度の星間物質中では電離が長期間持続する可能性があり、電離した原子が今日まで残存している。これはアダラとミルザムの短期間だが影響力の強い襲来による一種の化学的痕跡だ。



