友人からは「直近の上げ相場に乗り遅れたから参加しない」という声も聞くが、これは見方を誤っていると思う。1年で50回も最高値を更新するのはたしかに魅力的だが、金が本来の役割を果たすのにそこまでの値動きは必要ない。ポートフォリオの分散手段として、金は歴史的に株式と「逆相関」の関係にあった。つまり、金相場は株式相場が下がる時に上がり、株式相場が上がる時には下がることが多かった。
主役の座を奪った銀
金も相当好調だったが、2025年に最も輝いたのは先に述べたように銀だった。価格は2倍以上になり、年末には1トロイオンス70ドル超で取引を終えた。年間上昇率は過去最大だった。
特筆すべきは、現在、銀1トロイオンスの価格が原油1バレルよりも高くなっていることだ。これは両商品の相場の関係としてきわめて異例である。過去30年、銀価格の原油価格に対する比率は平均でおよそ0.27だった。言い換えると、銀1トロイオンスで北海ブレント原油を4分の1バレル強しか買えなかった。ところが現在、この比率は1.2まで高まっている。
言うまでもなく、これは普通の状態ではない。銀が原油に対してこれほど高くなったのは、ハント兄弟が銀市場の買い占めを図った1980年以来のことだ。アナリストのなかにはバブルの兆しを見て取る向きもある。
中国が銀も輸出規制
もちろん、銀相場を動かす要因はほかにもある。今日、銀は貨幣・資産用金属であるのと同じくらい、工業用金属でもある。銀の年間需要のおよそ50〜60%は、太陽光パネルや電気自動車(EV)、電子製品、医療機器など、テクノロジーや製造業分野からのものだ。太陽光パネル1枚には銀が約20グラム使用されており、EV1台にはセンサーや配線などに銀が最大で2トロイオンス(約62グラム)ほど使われている。
さらに、地政学的要因も絡んでくる。中国は1月1日から銀の輸出に対する規制を強化した。政府に認可され、巨額の与信枠を持つ企業にしか輸出が認められなくなり、事実上、何千もの中小企業が市場から締め出される形になる。中国は現在、世界の精製銀供給の60〜70%を握っていると推定されており、輸出が部分的に減速するだけでも市場を十分揺さぶりかねない。
金融メディアのFXストリートが伝えているように、旺盛な産業需要、薄い在庫、新たな輸出管理といった要因がすべて重なると、銀相場を押し上げる「パーフェクトストーム(究極の嵐)」が形成される。


