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2026.01.27 16:00

山口周とサントリーが語る、イノベーションを生み出す雑談の力

2022年にサントリーが提供を開始した「社長のおごり自販機」が企業の支持を集めている。その背景にあるのは、リモートワークの定着やDXの推進により、職場から急速に失われつつある「雑談」だった。一見成果に直結しないように思われる「雑談」の時間こそ、実は思わぬアイデア、ひいてはイノベーションの源泉でもあった 。著作家・経営コンサルタントの山口周と、現在サービスの成長を主導しているサントリーの圖師(ずし)淑隆との対話から、組織における「余白」の戦略的価値をひも解いていく。


不便さが呼び覚ます雑談とその価値

圖師淑隆(以下、圖師):かつて「いちばん身近な小売店」としてオフィスの日常を支えてきた自販機は、コンビニの拡大など流通環境の変化とともに、その役割を見直す局面を迎えています。「ただ飲み物を売るだけの箱」のままでは、職場に求められる価値に応え続けることは出来ない。こうした環境変化への問題意識から「社長のおごり自販機」は生まれました。

開発の着想となったのは、本来「飲みたいときにひとりですぐに買いに行ける」という便利な自販機の常識を転換した、あえて「一人では買えない」「誰かを誘わないと飲料が出てこない」という不便益な仕組みでした。不便さを課すことで、そこにコミュニケーションが生まれるのではないかと考えたのです。 

山口 周(以下、山口):「不便益」の重要性は、京都先端科学大学の川上浩司先生も提唱されています。現在は「不確実性の時代」とされていますが、実は60年前のビジネス誌などを見ても「大変革の時代」や「激動の時代」と言われていました。

実際には、利便性や効率化が極限まで追求されたことで、今の社会は不確実性が極端に不足しています。でも、実は人間は何かが起こるリスクよりも、何も起きないことのほうが耐え難い。だから不確実性のあるギャンブルや、反応が読めないSNSにハマってしまうのです。 

また、何かの行為に不確実性を導入すると、そこにはエンターテインメント性が生まれてきます。そして、その不確実性を乗り越えるためには仲間が必要となる。「何が起こるかわからないことに、仲間と一緒に立ち向かう」というのはゲームの基本プロットです。「社長のおごり自販機」は、職場に適度な不確実性をもち込むことで、ゲームのようなエンターテインメント性を生み出しているのだと思います。

圖師:社長のおごり自販機は、基本的には2人で社員証をタッチする事で好きな飲料をもらえますが、「何が出てくるか分からない」というランダムに商品が出てくる設定も可能です。思い通りにならない不確実性があるからこそ、「当たりが出た!」「交換しようか」といった会話が自然と発生するようになっています。

導入企業の現場では、自販機の前で「せーの」という楽しそうな声が聞こえたり、行列ができることもあり、かつては考えられなかった光景が広がっているそうです。たった数分でも、その小さな余白が心理的な緊張を解きほぐし、職場の空気を確実に柔らかくしている手応えがあります。

山口:文化人類学には「正統的周辺参加」という概念があります。「正統的周辺参加」とは、例えば寿司職人の見習いが、最初は皿洗いや出汁取りといった周辺的な業務を行いながら、親方の客あしらいやトラブル対応といった教科書にない知恵を盗み見て学んでいくようなことです。

かつてのオフィスでは、若手は先輩の無駄話や電話対応といった雑事のなかから仕事を学んでいました。私が新卒で入った電通でも、部会の時間のほとんどは「最近なんか面白いことあった?」という雑談でした。一見サボっているようで、実はクライアントに語るべき世の中の予兆を仕入れる、最も重要な時間だったのです。

現在は、リモートワークや過度な効率化によって、そうした「非予定調和な学び」の機会が失われてしまいました。雑談が生むその数分間の余白は、実は人材育成や組織の強さにおいて、計り知れない価値をもっているはずです。

山口 周 著作家・経営コンサルタント
山口 周 著作家・経営コンサルタント

イノベーションに重要な「遊び心」

圖師:私自身、コロナ禍の真っ只中、業務の多くがリモートへと移行していく時期に、複数のプロジェクトを担当していました。なかでも印象に残っているのが、オリジナルラベルコーヒーを扱うプロジェクトです。当時、会議や開発、意思決定の多くはデジタルツールを介して行われるようになっていましたが、このコーヒーのプロジェクトは、現物を囲みながら議論を重ねる必要がありました。連日メンバーが顔を合わせ、ホワイトボードに向かってアイデアを書き出し、味や質感、世界観といった言葉にしにくい要素を共有していったのです。

その経験を通じて強く実感したのが、同じ空間で熱量を共有しながら思考を深めていくことの重要性でした。デジタルツールが進化し、リモートワークが合理的な選択肢となる一方で、対面の場にこそ創造性が発揮される、唯一無二の価値があるのだと改めて理解した出来事でした。

山口:生産性は労働投入量を分母とし、その成果(アウトカム)を分子にすることで算出できます。そして、生産性の向上には、分母(労働投入量)を減らす「効率化」と、分子(成果)を増やす「価値創造」の2つのアプローチがあります。無駄を削る効率化は即効性がありますが、やり続ければいずれ限界に突き当たり、長期的にはサステナブル(持続可能)ではなく、必ずどこかで壁にぶち当たってしまうのです。

一方で、分子を大きくする「価値創造」のアプローチ、つまりイノベーションを起こすには、異質な知の組み合わせが必要です。新幹線が航空機や船舶の技術の組み合わせで生まれたように、既存の要素を新しくつなぎ合わせることでしか、新しいアイデアは生まれません。そのためには、部署や専門性が異なる人たちが偶然出会い、雑談レベルで情報を交換するネットワークが不可欠なのです。

圖師:現場のマネジメント視点で言うと、今はハラスメントへの配慮やコンプライアンス意識の高まりから、昔のように「ちょっと飲みに行こうか」と気軽に誘って腹を割って話すことが難しくなっています。

だからこそ、この自販機がつくるたった数分の雑談を通じて、相手の人となりを知るきっかけにしたい。マネージャーとして、意図的に生まれる雑談の機会を大切にしながら心理的な安全性を確保し、チームの中にアイデアを言い合える土壌をつくっていきたいと考えています。

山口:イノベーションの種を見つけるには、直属の上司だけでなく、斜めの関係や他部署の人など、多様な視点をもつ20人にアイデアを聞いてもらえる環境が必要です。ある研究によると、成功したイノベーションのうち、初期段階で「素晴らしい」と評価されたものはわずか1〜2割しかないそうです。つまり、8〜9割の革新的なアイデアは、最初は誰かに否定されている。

もし組織のネットワークが上司との縦ラインしかなく、直属の上司が理解できなければ、そのアイデアはそこで死んでしまいます。しかし、社内に斜めや横の豊かな関係性があり、20人の異なる専門性をもつ人に見てもらえる環境があれば、全員が否定する確率はぐっと下がり、誰かひとりが「面白いね」と価値を見出し、敗者復活する可能性が高まるのです。

革新を生む組織には共通して「遊び心」や「ハックの感覚」があります。GoogleやFacebook、Appleといった現代の巨大テック企業の多くは、もともと遊びやサイドプロジェクトから始まっています。GoogleのGmailも、業務時間の20%を好きなことに使ってよいという「20%ルール」から生まれました。自然界を見ても、蟻塚の蟻の約3割は働かずに遊んでいると言われますが、全員が働き詰めのコロニーはかえって滅びてしまいます。組織に「遊び」や「余白」がないと、非予定調和なイノベーションは生まれないのです。

圖師:サントリー創業者の鳥井信治郎の口癖である「やってみなはれ」は私たちのDNAでもあります。一方で、それは単に「好き勝手に挑戦していい」という意味ではありません。「社長のおごり自販機」も、最初から手放しで承認されたわけではなく、全力で考え抜き、成功に向けて準備を尽くしました。それでもどうしても不確実な部分は残ってしまうけれど、最後には思い切って飛び込む。そこまで考え抜き、“本気の挑戦”になってはじめて背中を押してもらえるのです。

圖師淑隆 サントリービバレッジソリューション マーケティング本部 サービス戦略部長
圖師淑隆 サントリービバレッジソリューション マーケティング本部 サービス戦略部長

組織へのエンゲージメントや幸福を生み出すために

圖師:実際に導入いただいた企業からは従業員満足度95%、利用率98%と、私たちの予想を超えた反応をいただいています。さらに驚いたのは、採用活動への効果です。「社長のおごり自販機がある会社」としてホームページで紹介したり、リクルートの武器として活用されたりする企業様もいらっしゃいます。単なる飲料提供を超えて、私たちが掲げる「社員のつながりを大切にする会社」というメッセージにもつながっています。

山口:日立製作所のフェロー・矢野和男さんの研究によると、組織の幸福度は人間関係の形に相関します。リーダーとメンバーだけがつながる「V字型」よりも、メンバー同士も横でつながる「三角形(トリニティ)型」の組織のほうが、幸福度も生産性も高いことが分かっています。

「社長のおごり自販機」がつくる行列や雑談は、まさにこの「三角形」のつながりを強化する装置として機能している。一見すると非効率な行列や雑談の時間こそが、実は組織のエンゲージメントを高め、結果としてイノベーションを生み出す土壌となっているのです。

圖師:これまで私たちは、この自販機をオフィス環境の改善や福利厚生、いわゆるHR側の課題解決ソリューションの位置づけで考えていました。しかし、今日の山口さんとのお話を通じて、イノベーションや事業成長にもつながり得ると改めて納得できました。一見相反する要素である「効率化」と「余白」の両輪を回すことで、イキイキと健やかに働くことができる職場環境と企業の成長を両立させていきたいです。

山口:現代の経営者にとって、職場におけるつながりや関係性をどうデザインするかは、極めて重要な経営課題です。効率化の追求で失われた人間らしい接点を、テクノロジーや仕組みでどう再構築するか? 「社長のおごり自販機」はそのひとつの解を示していると思います。

サントリービバレッジソリューション
https://www.suntory.co.jp/group/sbs/

■社長のおごり自販機とは 
https://www.suntory.co.jp/softdrink/jihanki/solution/ogori/
2人で社員証をタッチすると飲み物がタダになる、法人向け自販機サービスです。サービス分の飲料費用は法人様負担となります。


やまぐち・しゅう◎著作家・経営コンサルタント。電通、ボストン・コンサルティング・グループなどで戦略策定、文化政策、組織開発等に従事。世界経済フォーラムGreat Narrative Initiativeメンバーなどを務める。著書に『世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?』『ニュータイプの時代』など多数。

ずし・としたか◎サントリービバレッジソリューション マーケティング本部 サービス戦略部長。2004年サントリーフーズに経験採用で入社。サントリー食品インターナショナルのグローバル新規事業開発及びNYの飲料スタートアップへの留職経験、国内の新規事業開発プロジェクトのマネージャーを経て、24年から現職の自販機事業における法人サービスのグロースの責任者として従事。

Promoted by サントリービバレッジソリューション / text by Michi Sugawara / photographs by Masahiro Miki / edited by Akio Takashiro