インドネシアのコモド島および周辺の島々に生息するコモドドラゴン(和名はコモドオオトカゲ、学名:Varanus comodoensis)は、地球上で最大のトカゲだ。だが、彼らが恐るべき生物である理由はそれだけではない。畏怖を覚えるほどの体躯に加えて、現地の村人や観光客が語るコモドドラゴンの評判は、悪名高いといっても過言ではない。コモド国立公園の記録によれば、コモドドラゴンが関与した人身事故はこれまでに24件報告されており、うち5件で死者が出ている。
しかし、コモドドラゴンが世界最大・最強のトカゲである理由は、こうしたセンセーショナルなデータを超えた部分にある。彼らの狩猟戦略と進化的適応、そしてこれらが生物学全般にもたらす重要な示唆について考察していこう。
「世界最強のトカゲ」の秘密

コモドドラゴンは、大きさだけを見ても規格外の存在だ。2019年に学術誌『BMC Genomics』に掲載された論文にあるように、成体は最大で全長3m、体重は100kg近くに達することがある。ほとんどの種のトカゲとは比べ物にならないほど巨大で、有鱗目(爬虫綱のうち、ヘビとトカゲからなる分類群)の現生種としては最大級だ。しかし、彼らを頂点捕食者たらしめる理由は、そのサイズだけではない。
コモドドラゴンは機会を逃さず、高い順応性をもつ肉食動物であり、驚くほど多様な獲物を捕食する能力をもつ。鳥や小型哺乳類を難なく捕えるだけでなく、俊敏かつ強烈な攻撃により、シカや家畜、時にはスイギュウさえ仕留める。縁が鋸歯状になった歯と、がっしりした首の筋肉を使って、肉を深く切り裂く噛み傷を与え、そのあとは、負傷によってじわじわと弱っていく獲物のあとを追跡する。
コモドドラゴンに襲われた獲物が死に至るメカニズムは、数十年にわたって議論の的だった。初期の多くの文献では、コモドドラゴンの口内は「不潔」で、敗血症を引き起こす細菌の巣窟であるため、噛まれて負傷した動物は、細菌感染による死を避けられないとされた。実際、両生爬虫類学者も動物好きの一般人も、数十年にわたりこの仮説を事実として受け入れてきた。
しかし、2009年に学術誌『米国科学アカデミー紀要(PNAS)』に掲載された論文により、全貌が明らかになった。コモドドラゴンは、生物活性を備えた毒を生成しており、噛みついた際に、この毒が獲物の傷口から侵入するのだ。毒は抗凝血剤として作用し、血圧を低下させ、失血を加速させる。ただし、こうした作用そのものが即座に死をもたらすわけではなく、この点では猛毒をもつヘビとは異なる。
複雑な生物学的形質はみなそうだが、コモドドラゴンの毒は、捕食者として彼らが持つツールキットのごく一部にすぎない。コモドドラゴンは、強靭な四肢と鉤爪、肉を切り裂くのに特化した歯、数km離れた場所から死肉のにおいを嗅ぎつける鋭敏な嗅覚を備えている。これらの特徴すべてが、コモド島の頂点捕食者という評価を確たるものとしているのだ。



