経営是正を求めた大株主を追放、内部調査で見た資金枯渇の現実
ナジーやフィリップスが「資金はどこへ消えたのか」と疑問を抱く中で、その答えに最も近づいたと語るのがジェフ・トーマス(66)だ。トーマスは、モバイルホームやRVパークへの投資家で、REITの発行済み株式の約5%を保有する最大の外部株主だった。会社のポッドキャストにも出演し、新規投資家にRADを紹介していた。2018年に初めて投資し、最終的にはRADの各種プログラムに計150万ドル(約2億3000万円)を投じた。
トーマスは2024年初めまで、REITからの分配金、共同事業の収益、RADに貸し付けた融資の利息を受け取っていたが、その後支払いは停止した。会社側からは「一時的な資金繰りの問題だ」と説明されたという。
2025年夏までに、トーマスは透明性の確保を強く求めるようになった。7月にはREITの取締役に加えられたが、ほかの候補者は、係争中の訴訟を理由に役員賠償責任保険に加入できず、就任を見送ったとトーマスは語る(その中には、10万ドル[約1600万円]超を投資したとする保守系トークラジオ司会者のバック・セクストンが起こした民事訴訟も含まれる。セクストンは、RADが自分を誤解させ、「割安な不動産投資への直接アクセス」を提供するという約束を果たさなかったと主張している。RADはこれに対し、訴えは不備があり、連邦裁判所の管轄外だとして却下を求めている)。トーマスは自ら保険に加入し、取締役に就任した。
取締役に就任すると、トーマスはRADの銀行口座へのアクセス権を得て、資金移動や残高の確認を始めた。そこで目にしたのは、RADの複数の関連会社間で資金がどのように動いているのかについて、重大な懸念を抱かせる内容だったという。10月中旬、彼はタンパ郊外のウェントワース・ゴルフコースで、ブランドン・メンデンホールとエイミー・ボーンに面会した。このゴルフ場は、メンデンホールとボーンが別会社を通じて所有しており、2人は2025年夏の時点でも、この案件について新規投資家を積極的に募っていたという。
トーマスによると、数日間にわたる協議の中で、彼は経営陣に経営の主導権を手放し、投資家主導で会社再建を試みるよう強く求めた。合意に達したと考えたが、翌日になってメンデンホールとボーンは方針を翻し、REITのみを引き渡すと申し出たという。その数日後、トーマスは取締役を解任され、口座へのアクセスも遮断された。
銀行口座の残高は約3億7000万円、関連会社の財務はブラックボックス
10月下旬、トーマスは投資家向けに自身が把握した内容をまとめた書簡を送付した。彼は、その中でREITは「破綻状態」にあり、家賃収入は1月の約30万ドル(約4700万円)から9月には約18万ドル(約2800万円)にまで落ち込んでいると記した。複数の物件は差し押さえ手続きに入り、税金や保険料は支払われていなかった。家賃の支払いを拒む入居者もおり、農地は売却されていた。銀行口座の残高は236万ドル(約3億7000万円)にすぎなかったという。
また、多くの共同事業物件が投資家への通知なしに売却または借り換えられ、「資金が共同事業のパートナーに分配されていない可能性がある」とも記した。トーマスは、RADの関連会社が保有する不動産の価値は約9000万ドル(約140億円)、負債は少なくとも同額にのぼると推計している。複数の関連会社は、取締役である自分でも中身を把握できない「ブラックボックス」状態だったと警告した。
違法な節税策を指南した会計士、裏で行われた不透明な資産移転
一部の投資家は、そうした違和感は社内にとどまらず、社外にも広がっていたと語る。彼らが指摘するのが、RADのイベントで税務戦略を売り込んでいた会計士、チャールズ・ドンベックとの関係だ。ドンベックは自身のリンクトインで、自らを「映画ファイナンスの専門家」と称し、インディペンデント映画のプロジェクト向けに3億ドル(約468億円)超のブリッジローンを確保してきたとアピールしている。また、歯科医向けの税務戦略を専門分野としているようで、1000人以上の歯科医と仕事をし、税負担を30%以上削減したほか、「100件を超える歯科医院の事業売却を成功させた」とも記している。
しかし2024年10月、ドンベックは米司法省と恒久的差し止め命令に合意した。この命令により、政府が「見せかけの管理会社」「不適切な所得移転」「濫用的なキャプティブ保険スキーム」と位置づけた手法を含む、特定の税務戦略を宣伝することが禁じられた。差し止め命令は本人の同意のもとで出されたが、不正行為を認めたことを意味するものではない。ドンベックはコメント要請に応じていない。
ドンベックをめぐるこうした問題が明らかになると、投資家の間では「資金が戻らないのではないか」という不安がいっそう強まった。公開資料によると、ドンベックは、エイミー・ボーンの息子のためにフロリダ州でLLCを設立しており、その際にRADの本社住所と、ボーンがRADで使用していたメールアドレスが登録に使われていた。ボーンの“切れ者の税務アドバイザー”によるこうした水面下の動きは、投資家の不信感を募らせる結果となった。
裁判所が約14億8000万円の賠償命令、資金不足で回収は困難な見通し
一方で、RADとその関係者に対する圧力は強まっている。フロリダ州司法長官による捜査が続く中、RAD本社があるヒルズボロ郡の裁判所は、2025年に入ってこれまでに、RADの関連会社に対し総額950万ドル(約14億8000万円)にのぼる18件の欠席判決を言い渡した。欠席判決は、被告が訴訟手続きに応じなかった場合に下されるのが一般的だ。ただし、回収できる資金が残っていなければ、投資家にとってその判決はほとんど意味を持たない。


