北米

2026.01.11 13:00

約156億円の資産が消滅、法律の不備を突いた米「不動産投資詐欺」の悲劇

PeopleImages/Shutterstock.com

RADダイバーシファイド創業者の顔ぶれ

RADダイバーシファイドという社名は、創業者の名前に由来する。2020年に会社を去ったランドル・ボウリングに加え、ブランドン・ダッチ・メンデンホール(46)とエイミー・ボーン(46)の3人だ。

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メンデンホールはアイオワ州で育ち、若い頃は野球選手としてプレーし、その後はサンフランシスコ大学でコーチを務めた。やがて不動産業界に転じた彼は、提出書類によれば、商業用不動産や銀行分野を専門とするエグゼクティブ・リクルーターとしてキャリアをスタートさせたという。2008年の金融危機後に差し押さえが急増した局面では、「タックス・オークション・インベスターズ」と呼ばれる不動産教育ビジネスを立ち上げていた。

エイミー・ボーンはフィラデルフィア出身で、リンクトインのプロフィールによると、21歳だった2001年にフロリダへ移り住んだ。同年に不動産と保険のライセンスを取得したとしており、その年に「数百万ドル(数億円)規模の企業を経営していた」とも主張している。ボーンのオンライン上での発信は、モチベーションを鼓舞する言葉やイメージが前面に出ており、名言の引用や「根性」「野心」「忍耐」といった価値観への言及が目立つ。また、虐待やネグレクトを受けた子どもを支援するタンパの非営利団体ジョシュア・ハウスでの慈善活動も強調している。元従業員によると、ボーンはブランドン・メンデンホールが展開していた不動産セミナー事業の営業活動を担っていたという。

元従業員の話では、このグループは当初、経営難に陥った不動産や任意売却物件を扱っていたが、その後、不動産セミナー事業へと軸足を移した。彼らはマーケティング、営業、バックオフィス業務を一手に担い、カナダの差し押さえ物件の専門家として知られるダスティン・ハーンなど、業界で名の通った人物を顧客として抱えていた。

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不動産セミナー事業より高収益と判断、自ら投資を行うファンドを設立

一方、ブランドン・メンデンホールは2024年のポッドキャスト番組で、セミナーで自身の経験を売りにするようになった理由を語っている。それによると、彼が宣伝を請け負っていた多くの“カリスマ講師”は、実際には不動産投資を行っていなかったり、すでに時代遅れとなった手法を教えていたりしたという。彼によれば、やがて受講生の側から「コーチング料を払うだけでなく、一緒に投資したい」という声が上がり始めた。こうした要望を受け、2015年には一戸建て住宅への投資を目的とする3本の不動産ファンドを立ち上げたという。

元従業員によると、初期のファンドはいずれも規模が比較的小さく、集められる資金の額にも限りがあった。2018年の提出書類では、あるファンドが一戸建て住宅46戸を保有し、総資産は580万ドル(約9億円)だったことが示されている。その後、2017年までにグループはRAD Diversified REITを設立し、より幅広い投資家層から、より大きな資金を集めるようになった。RADのエイミー・ボーンやブランドン・メンデンホールは、この件について複数回のコメント要請に応じなかった。

事業の軸足は、時間の経過とともに高額なセミナーの開催から、自社で不動産案件を見つけ、投資するモデルへと移っていった。社内で働いていた人々によると、メンデンホールとボーンは「顧客がやっていることを自分たちにもできる」と考えるようになり、セミナー運営のみよりも、投資のほうがはるかに大きな収益が得られると見込んでいたという。

当初は、不動産購入のための小規模な共同事業を立ち上げるところから始まり、それが構造化された投資プログラムへと発展し、1本のファンドが複数のファンドへと広がっていった。事業拡大に伴い、メンデンホールとボーンは、年会費5000ドル(約78万円)以上を課す会員制グループ「オルタナティブ・インベストメント・アソシエーション」も立ち上げている。

共同事業という名の甘い罠、知らない間に売却されていた所有物件

フィラデルフィア郊外在住の元事業経営者トム・ネイギー(57)は、RADの「インナー・サークル」に参加した後、同社の共同事業に資金を投じたと語る。2カ月の間に、彼は住宅関連の共同事業4件に計33万ドル(約5100万円)を拠出した。内訳は、ペンシルベニア州の住宅3軒と、カリフォルニア州ビッグベアの住宅1軒だった。RADに対して10万ドル(約1600万円)を貸し付け、タンパ郊外にあるゴルフ場「ウェントワース・クラブ」の1%の持ち分にも投資した。このゴルフ場は、RADと関係のある別会社オムニコ・ゴルフが所有しており、同社は自社サイトで、2025年9月までに6コースを取得する計画を掲げていた。

ネイギーによると、勧誘が個人的な色合いを帯び始めたのは、2023年10月にアイダホ州で開かれたRADの投資家向けイベントに参加したときだった。滞在初期、すでに自分が所有している物件がまだ売り出し中であるかのように紹介されるプレゼンを目にした。問いただすと、「システムが更新されていなかった」と説明されたという。その後、連絡は取りづらくなっていった。

ネイギーは、共同事業からの家賃収入と、貸付金に対する利息の支払いを期待していたが、いずれも支払われなかった。届いた明細には、裏付けを確認できない手数料や修繕費が記載されていた。請求書の提出を求めても、送られてくることはなかったという。2023年後半には、4件すべての共同事業物件が売却されたと告げられた。1件は小さな利益が出たとされたものの、その金額は受け取っていない。2件は損失となり、残る1件については、見たこともない改修工事を理由に、会社に4万ドル(約624万円)を支払う義務があると告げられたという。これまでに回収できたのは、33万ドル(約5100万円)の投資額のうち1900ドル(約30万円)にとどまっている。

50対50の約束は守られず、出資した持ち分を勝手に売却

バージニア州出身の元救急救命士ロニー・フィリップス(61)も、同様の経験を語る。彼は2021年10月、共同事業は「真の50対50のパートナーシップ」であり、RADも自ら資金を投じていると説明を受け、インナー・サークルに参加した。フィリップスは、「RADも持ち分を保有している点に説得力を感じた」と話している。

彼は、タンパのハーフムーン湖沿いに広がる約31エーカーの敷地に建つ湖畔住宅など、2件の不動産に投資した。この物件にはプールやゲスト用アパートがあり、湖に面した間口は約49メートルに及ぶ。不動産サイトZillowの推計では、現在の評価額は約160万ドル(約2億5000万円)とされている。

フィリップスは、自身とRADがそれぞれ物件の50%ずつを保有していると信じていた。しかし後になって、RADが持ち分の大半を別のRAD投資家に売却し、会社側の持ち分は約10%にまで減っていたことを知ったという。この変更は本人に知らされないまま行われ、彼が前提としていたインセンティブ構造を根底から崩すものだったとフィリップスは語る。物件はその後売却されたが、いずれの投資家にも売却益は支払われなかったという。もう一方の投資家は最終的にフロリダ州でRADを提訴し、欠席裁判で勝訴した。

フィリップスの不満を募らせたのが、共同事業の物件の1つが、RADの投資家向けズーム会議で「収益を生んでいるREITの資産」として紹介されたことだった。実際には、そのREITは当該物件を所有していなかった。問題を指摘すると、取り合ってもらえなかったという。フィリップスはRADに総額約30万ドル(約4700万円)を投資していたが、過去の償還に伴う少額のREIT分配金を除けば、2件の共同事業からの支払いは一切受け取っていないと語る。

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翻訳=上田裕資

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