北米

2026.01.11 13:00

約156億円の資産が消滅、法律の不備を突いた米「不動産投資詐欺」の悲劇

PeopleImages/Shutterstock.com

説明のない配当停止と資産凍結、ポンジ・スキームの疑いで当局が捜査

投資家によるとカーが去った後の数カ月で、RADのファンドからの分配金は次第に遅れ始め、やがて理由の説明もないまま停止した。REIT投資家への支払いは滞り、RADに貸し付けた融資に対する利息も支払われなくなった。同社はこうした資金不足の原因を、「住宅販売全体の低迷にある」と説明していた。2023年後半には住宅ローン金利が8%近くまで上昇しており、多くの投資家はRADの説明を信じていたという。

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事態が悪化したのは2024年2月だった。米証券取引委員会(SEC)が、RAD Diversified REITの募集届出書を「放棄されたもの」と判断し、新規資金の調達を停止させた。また、それと同じ日にRADは投資家による資金の引き出しを凍結した。共同事業の投資家によると、月次の支払いも同じ頃に止まった。融資として貸し付けた資金の返済も行われなかった。会社側からの連絡は次第に途絶え、一部の共同事業では、物件の所有者であるパートナーに通知がないまま、不動産が売却されていたという。

州司法長官が詐欺の疑いで召喚状、推定で約156億円にのぼる資産が行方不明

その後も資金の引き出しが凍結されたままの状態が続く中、2025年7月、フロリダ州司法長官のジェームズ・ウスミアは、RADが投資家資金を説明どおりに使用していないという苦情を受け、召喚状を出したと発表した。ウスミアは公表した声明の中で、「これはポンジスキームである可能性がある」と述べた。

これに対しRADは、裁判所への最初の回答でこの主張を争った。同社は、フロリダ州司法長官の法務局には管轄権がなく、求められている記録は、すでに調査に着手しているSECから入手すべきだと主張した。RADのオーナー側は、SECも同社を調査していることを投資家に知らせており、こうした経緯を明らかにする中で、RADはすでに100万ページを超える社内文書をSECに提出したとも説明していた。

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2025年夏にRADの取締役会に参加し、帳簿へのアクセス権を持っていたある投資家によると、同社の不動産ポートフォリオでは差し押さえが多数発生しており、推定で約1億ドル(約156億円)にのぼる資産が行方不明になっていたという。

規制緩和が生んだ監視の死角、非上場REIT市場に潜むリスク

RADダイバーシファイドは今、相次ぐ訴訟に加え、当局の捜査官による帳簿や記録の精査を受け、南フロリダで最大級の投資詐欺疑惑の1つとして注目を集めている。この案件は、2012年に制定されたJOBS法を悪用し、制度の隙を突いて資金を集める投資ビジネスが広がってきた実態を示す例ともいえる。JOBS法に盛り込まれた規則は、企業がIPOを経ることなく開示を最小限に抑えたまま、しかも緩いマーケティング規制の下で、数百万ドル(数億円)規模の資金を水面下で調達することを可能にしてきた。

こうした制度のもとで、非上場REITはJOBS法を活用する起業家にとって格好の分野となってきた。証券取引所で売買され、SECへの定期的な報告義務があり、株価も容易に確認できる上場REITとは異なり、非上場REITは、資金の引き出しを制限し、継続的な情報開示も大幅に少ない。そのうえ、手数料が高く設定されているケースも多い。オルタナティブ投資を追跡する調査会社ブルー・ボルトのデータによると、非上場REITの運用資産は、2010年代初頭の780億ドル(約12.2兆円)から、2025年には1780億ドル(約27.8兆円)へと急拡大した。

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翻訳=上田裕資

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