この金銭的な成功は、長年かけてゆっくり積み上げてきたものだ。特に、2000年代初頭にデスティニーズ・チャイルドから独立し、2010年に父親によるマネジメントをやめた後は顕著だ。彼女は音楽を「イベント化」する新しい方法も見いだした。2013年のサプライズアルバム『BEYONCÉ』、2016年にHBOで公開した映像付きアルバム『Lemonade』、そして2018年にコーチェラで大トリを務めた公演「Homecoming。後者はYouTubeで45万8000人の同時視聴者を集め、最終的にはネットフリックスのドキュメンタリーとなり、彼女は同サービスから推定6000万ドル(約93億8000万円)を受け取っている。
『Cowboy Carter』では、クリスマス当日のNFL試合でネットフリックスが初めて手がけた特別ハーフタイムショーを行い、制作費を含め推計5000万ドル(約78億1000万円)を得た。さらに新たなウエスタン調の美学を前面に押し出し、Levi’sのCMシリーズに出演して、推計1000万ドル(約15億6000万円)を手にしている。
『Texas Hold ‘Em』のようなヒットがある一方で、データ提供会社Luminateによれば、2025年のビヨンセのディスコグラフィーのアルバム換算売上(ストリーミングに加え、デジタル販売とフィジカル販売も考慮する指標)は、サブリナ・カーペンター、バッド・バニー、ザ・ウィークエンドといった他のポップアーティストの半分以下だったという。
それでも、ツアーがアーティストの年間収入の4分の3超を占める──音楽業界関係者は、多くのケースで9割に達し得ると示唆する──という環境では、最も稼ぐアーティストはコールドプレイ、シャキーラ、エド・シーランのように、最大級の会場を埋められる者たちだ。
そしてビヨンセは、まさにそれを過去10年にわたり実現してきた。彼女は2016年、全公演がスタジアムのツアーを率いた初の女性アーティストとなり、2023年のRenaissance World Tourではスペクタクルをさらに別次元へ引き上げた。テイラー・スウィフトと同様に、彼女は公演のコンサート映画を制作し、AMCの劇場チェーンを通じて直接配給した。これにより、映画の世界興収4400万ドル(約68億8000万円)のうち、ほぼ半分を自らの取り分として確保した。
近年ビヨンセが行ってきた稀なインタビューで彼女は、『Renaissance』と『Cowboy Carter』が、異なるジャンルから成るアルバム三部作の最初の二つだと述べている。ファンは、次に彼女がどのように自らを再発明するのか、そしていつ再びライブを行うのかを推測するほかない。ただし、彼女は今年GQ誌に対し、今後は子どもたちの学校が休みの時期にだけツアーを行いたいと語っている。子どもたちにできるだけ普通の子ども時代を過ごさせたいからだという。
「私は自分の境界線に忠実であり、自分自身と家族を守るために、極端なまでの努力をしてきました」と彼女はいう。「どれほどのお金があっても、私の心の平穏に見合うものではありません」


