「自分でマネジメントすると決めたとき、大手のマネジメント会社に行かないことが重要でした」と彼女は、セルフタイトルのアルバム『BEYONCÉ』を宣伝していた2013年のインタビューで語っている。「マドンナの足跡をたどって、強力な存在になり、自分の帝国を持ちたいと思ったのです。そして、キャリアがここまで達した女性たちに、誰かと契約してお金や成功を分け合う必要はない──自分でやるのだと示したかったのです」
「クイーン・ベイ」は、ヘアケアブランドCécred、ウイスキー銘柄SirDavis、衣料ラインIvy Park(2024年に終了)など、セレブリティ向けで相性の良い複数の業界に事業を広げてきた。一方で、個人資産の大半は音楽に由来する。極めて価値の高い自らの権利を管理し、世界規模のツアーで巨額の収入を得ているためだ。
エンターテインメント業界のどのカテゴリーをみても、スタジアムを完売できるミュージシャンほど収益性の高い存在はほとんどいない。そしてパンデミック後の時代、アーティストはライブを「より多く、より大きく」する方向に舵を切り、スペクタクルを巨大化させ、ツアー終盤にドキュメンタリー映画を付け加えることも珍しくなくなった。
今年夏のCowboy Carter Tourのチケットは、約3時間にわたるビヨンセのパフォーマンスを見られることを保証するだけでなく、空飛ぶ車、(もちろんSirDavisを注ぐ)ロボットアーム、金色の機械仕掛けの雄牛、さらに夫や子どもたち、かつてのデスティニーズ・チャイルドのメンバーらのゲスト出演まで含んでいた。
こうした世界規模のプロダクションに組むことは、当然ながら巨大で(そしてコストのかかる)取り組みだ。Cowboy Carter Tourでは、350人超のクルー、セミトラック100台分の機材、そして都市間移動のために747型貨物機8機が必要だった。従来型のツアーであれば、この規模のショーは経済的に成り立たない。だがビヨンセは、新たな「ミニ・レジデンシー」モデル(少数の会場に数日間滞在し、複数回公演する方式)の先駆者の一人であり、米国と欧州のわずか9つのスタジアムを複数日押さえて、合計32公演を行った。そしてテイラー・スウィフトのEras Tourと同様、ファンはこの豪華絢爛な体験のためなら長距離移動もいとわず、法外な価格を支払う意欲があることが証明された。
ライブ業界紙Pollstarによれば、Cowboy Carter Tourのチケット売上の合計は4億ドル(約625億円)超。さらにフォーブスの推計では、会場での物販は、追加で約5000万ドル(約78億1000万円)に達した。そしてParkwood Entertainmentがすべてを制作したことで、ビヨンセはより高い利益率を確保できている。ツアー収入に、音楽カタログからの収益と今年のスポンサー契約収入を合わせると、フォーブスは2025年の税引前収入を1億4800万ドル(約231億2600万円)と見積もっている。これにより彼女は世界で3番目に稼ぐミュージシャンとなった。


