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2025.12.27 08:00

トランプ政権が圧力強めるベネズエラ、体制転換試みれば大惨事必至

ベネズエラの首都カラカスで2025年11月25日、軍事セレモニーに出席したニコラス・マドゥロ大統領(手前左)=ゲッティ

ベネズエラの首都カラカスで2025年11月25日、軍事セレモニーに出席したニコラス・マドゥロ大統領(手前左)=ゲッティ

ドナルド・トランプ米大統領がベネズエラのニコラス・マドゥロ大統領に対する退陣圧力を一段と強めている。米軍はカリブ海で軍事プレゼンスを増強しており、1万5000人規模の人員、海軍戦力の15%を動員していると報じられている。

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米国がベネズエラへの地上侵攻に踏み切るべきかどうかについては、共和党議員の間でも意見が割れている。ただ、多くの専門家は、ベネズエラの体制転換を目的としたどのような作戦も、多大な損害と地域の不安定化を招く泥沼に陥ると警鐘を鳴らしている。

1989年のパナマ侵攻はモデルにならない

ベネズエラへの軍事介入を主張する向きは、米国が1989年12月20日に開始したパナマ侵攻、コードネーム「ジャスト・コーズ(正当な大義)作戦」を介入のモデルとして引き合いに出すことがある。2万6000人規模の米軍部隊が投入されたパナマ侵攻は、作戦としては成功したと見なされた。軍事独裁者のマヌエル・ノリエガ将軍は数週間のうちに権力の座を追われ、その後、米国で麻薬関連の罪で有罪判決を受けた。無効にされていた1989年5月の選挙結果も回復された。

だが、この「成功」は大きな犠牲を伴っていた。パナマ人500人超(民間人約200人を含む)が死亡し(編集注:これらは米国側が発表した数字。民間人の犠牲者はもっと多いとする推計もある)、数千人以上が家を失った。パナマ市では略奪や放火が発生し、無法状態が広がった。この侵攻でパナマ経済が被った損害は推定5億ドル(現在の為替レートでは約780億円)にのぼると伝えられる。

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パナマ侵攻は実のところ、異例と言っていいほど有利な条件に恵まれていた。パナマの当時の人口はわずか240万人ほどで、ノリエガは国民の間で概して不人気だった。侵攻に先だち、75万人にのぼるパナマ国民が街頭に繰り出して平和的な抗議活動を行い、世論調査でも彼の排除を支持する声が広範に存在することが示されていた。さらに言えば、一般的な認識と異なり、軍や治安機関もノリエガに固く忠誠を誓っているわけではなかった。ノリエガは1988年と1989年、2度にわたりクーデタ未遂に遭っており、権力の掌握が万全ではないことが露わになっていた。ベネズエラへのどのような侵攻も、パナマ侵攻より格段に難しい課題に直面するだろうし、破壊の規模や犠牲者の数もはるかに大きなものになるだろう。

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翻訳・編集=江戸伸禎

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