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2025.12.27 08:00

トランプ政権が圧力強めるベネズエラ、体制転換試みれば大惨事必至

ベネズエラの首都カラカスで2025年11月25日、軍事セレモニーに出席したニコラス・マドゥロ大統領(手前左)=ゲッティ

ベネズエラの準軍事組織と犯罪ネットワーク

ベネズエラ軍は作戦遂行能力が不足し、装備も老朽化しており、米軍には到底かなわない。それでも、当時のパナマに比べればはるかに大規模な兵力を有している。報道によると、ベネズエラの正規軍であるボリバル国軍(FANB)の現役軍人数はおよそ12万3000人とされ、1989年に存在したパナマ国防軍の1万2800人の10倍にのぼる。また、ノリエガはキューバやソ連といった国々から一定の支援を受けていたが、現在のベネズエラはキューバやロシアとさらに緊密な関係を築いている。たとえば、ロシアはベネズエラ国内にカラシニコフ自動小銃と弾薬を製造する工場を建設しているほか、ベネズエラ軍の基地(麻薬取引の拠点でもある)防衛用にS-300地対空ミサイルも送っている。

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パナマ国防軍もマフィア的な性格を帯びていたが、ベネズエラの国軍は非合法経済にもっと深く根を下ろしている。「カルテル・デ・ロス・ソレス(太陽のカルテル)」とは、麻薬取引や違法採掘、ガソリンの密輸から巨額の利益を得ているベネズエラ軍高官らによる、緩やかな犯罪ネットワークを指す呼称だ。

マドゥロは、FANBの一部である民兵450万人を動員できるとも主張している。米国による侵攻を警戒し、国内300カ所以上の兵営で数百万人の民間人が戦闘訓練を受けているとも言われる。参加者の大半は与党・統一社会党(PSUV)とつながりを持つ人々であり、祖国防衛の備えを「愛国的義務」と呼んでいる。

マドゥロはさらに、「コレクティーボ」と呼ばれる組織も頼りにしてきた。コレクティーボは、国内各地の都市部に存在し、治安部隊とつながりのある数十の武装政治グループからなるネットワークだ。ウゴ・チャベス前大統領に対する2002年のクーデタ未遂後に結成され、地域組織から準軍事組織へと発展してきた。コレクティーボは、反政府デモが生じた際に反体制の声を威嚇・抑圧し、現状維持を強要する役目を果たしている。また、普段からそれぞれの地元で監視活動や情報収集を行い、反体制派の動きを追っている。

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2013年のチャベス死去後、マドゥロが政権を引き継ぐと、コレクティーボは恐喝や闇市場活動に手を染めるハイブリッド型犯罪組織に変貌した。政治的抑圧への関与は減り、むしろ金銭的利益の追求にいそしむようになっている。ただし、チャベスが始めた「ボリバル革命」とマドゥロに忠実な勢力も依然として存在する。

コレクティーボは、都市ゲリラ戦で直接戦闘に参加する可能性は低いかもしれないが、消え去りそうにもない。彼らはベネズエラの都市部の大半で事実上の支配権を握っており、犯罪ビジネスの利権を手放したくないからだ。

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翻訳・編集=江戸伸禎

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