サイエンス

2026.01.03 18:00

ヘビの毒が、獲物の防御力との競争で急速進化するメカニズム

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1. ヘビは、遺伝子レベルで俊敏にできている

骨や筋肉といった構造的変化はゆっくりと進むが、毒の進化は、そうした制約を受けない。純粋に生化学の範疇であることが、独自の強みとなる。具体的にいうと、毒の遺伝子は極めて重複変異が起こりやすい。このため、ヘビは事実上、既存の遺伝子を「コピー&ペースト」することで、従来の機能を失うリスクを負わずに、新バージョンを試すことができる。

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2014年に学術誌『Genome Biology and Evoluion』に掲載された論文で述べられているように、ヘビ毒のシステムは、遺伝子重複と新規変異獲得の繰り返しを通じて進化した。通常の生理的機能をつかさどる遺伝子が毒へと転用され、そのあと自然選択を通じて急速に多様化したのだ。

いったん重複が起こると、その遺伝子には、並外れて高い頻度で変異が蓄積される。そして、進化的に見ると比較的短期間のうちに、新たな「変種」の毒がつくられる。

ただし、ヘビはすでに存在する有効な仕組みを、改めて一からつくり直すようなことをしているわけではない。むしろ、毒の遺伝子を大量生産し、リアルタイムで負荷試験にかけている、と考える方が的確だ。

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2. 被食者が対抗するにつれ、ヘビの進化が加速する

限られたタイプの獲物に特化しているヘビは、強い淘汰圧にさらされる。その被食者が何かしらの毒への耐性(血液凝固作用への保護、神経細胞受容体の変化、解毒メカニズムなど)を進化させれば、ヘビの毒の効果はすぐさま薄れる。

これにより、獲物の動きを止めることはより難しくなり、以前よりもずっと採食に苦労するようになる――そして、動物界において、食いっぱぐれは往々にして死を意味する。

加えて、被食者は、多種多様な戦略を駆使して、「赤の女王」が開催する進化のレースを競う。以下はその具体例だ。

回避行動
内因性血清様因子:毒の効果を無力化する低分子ペプチドや血清因子など
受容体におけるターゲットサイト変異:特定の毒素の結合を阻害し、効果を減少させる
毒の効果を減少させる形態的・生体力学的特徴:毒液の侵入を制限する、毒素の拡散を遅らせる、重量比での注入量を変化させる、組織・血管構造を通じた全身への急速な拡散を阻害するなど

これらの異なる防御機構はいずれも、毒の組成に対する淘汰圧として、フィルターのように作用する。そして、被食者の多くの種は個体数が多く、短命で、遺伝的多様性が高いため、その進化的反応は急速なものになりやすい。

したがって、被食者が毒への耐性を進化させ始めたときには、ヘビもこれに適応するしかないのだ。

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翻訳=的場知之/ガリレオ

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