サイエンス

2025.12.29 16:00

絶滅認定後に生存が確認されたレアなナナフシ、進む元の生息地へと戻す試み

ロードハウナナフシを紹介するオーストラリア・メルボルン動物園のスタッフ(Danny Ye / Shutterstock.com)

飼育下での繁殖や、個体数回復の取り組み

これらの疑問に対する答えが判明する以前からすでに、環境保護にあたる人々が、この種を保全するためにベストを尽くしていた。2003年にはボールズ・ピラミッドで、少数のロードハウナナフシ(正確には2組のつがい)が、飼育下で繁殖させるために採取された。うち1組は、シドニーの個人の繁殖家に送られ、もう1組は公共の保護施設に預けられた。

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これが、個体数回復に向けた最初のステップとなった。その後、このプログラムは成功を収め、数千個の卵が採取されて孵化に至り、飼育下の個体群から生まれた幼虫は、2016年までに1万3000匹以上に達した。

これらの努力により、ロードハウナナフシは、「世界で最もレアな昆虫の一つ」から、飼育下で健全な個体数を抱える種へと劇的に変化した。これにより、ゆくゆくは、もといたロードハウ島に再導入される望みも生まれつつある(本来の生息環境が回復され、外来の捕食者が排除されれば、ということだが)。

しかし、脆弱な種を屋内で飼育することの弊害も、研究から明らかになっている。2018年の病理学に関する研究では、この繁殖プログラムにおいて、セラチア・マルセッセンス(Serratia marcescens)や緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)などの細菌が分泌する毒素により、飼育されている個体の死亡率が上昇していることが判明した。

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2024年の微生物学に関する研究では、再導入の過程のなかで、元の環境に不注意によって細菌が持ち込まれた場合、さらに多くの昆虫病原糸状菌の系統が、野生個体群を脅かす可能性が指摘された。

これらの研究は、重要な点を浮き彫りにしている。すなわち、単に飼育環境で昆虫を繁殖させて、元の環境に放つだけでは十分ではないということだ。再導入するのであれば、個体の安全に万全を期す必要がある。

ロードハウナナフシの今後

絶滅したという誤った認定から数十年を経て、ロードハウナナフシは、壮大な環境回復プロジェクトの対象となった。このプロジェクトの一部として、ロードハウ島では、大がかりなネズミの撲滅作戦が敢行され、2019年に完了した。その結果、一時は絶滅必至とみられていた多くの種の個体数が盛り返している。

そして今、科学者と環境保護当局は力を合わせ、重要な次のステップに向けて準備を進めている。実に1世紀以上ぶりに、ロードハウナナフシを元いた島に再導入する取り組みだ。これを安全に達成するには、以下に上げる分野すべてに関する、近年の研究成果を生かす必要がある。

・ゲノム多様性
・飼育下における進化の知見
・病原菌のリスク
・環境モデリング
・すみかとなる植物の植生回復

一時は絶滅したと考えられ、歴史の中で失われていたロードハウナナフシは、孤立した細長い柱のような火山性の岩で、誰にも見つからず、過酷な環境に助けられるかたちで何とか生き延びてきた。

苦難に耐える力と幸運、そして現代の科学が味方したことで、この昆虫は再び繁栄できるかもしれない。少なくとも、かつての生息地を再び歩き回る可能性が出てきたのだ。

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forbes.com 原文

翻訳=長谷睦/ガリレオ

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