その後、2017年に学術誌『Current Biology』に掲載されたゲノム分析によって、この疑問への答えが出た。ボールズ・ピラミッドで見つかった個体群と、かつてロードハウ島で採取された標本を比較したところ、両者のミトコンドリアゲノムがほぼ同一であることが判明したのだ。相違はわずか1%未満で、1世紀近くの時間が経過しているという事情を考えると、これは単一の種の変異幅として、完全に予想の範囲内に収まる数値だ。
言い換えれば、この分析結果から、再発見された昆虫の個体群は、間違いなくロードハウナナフシの生き残りであることが裏づけられたということだ。
これは、種の復活を裏づける力強い証拠であるとともに、生き残りが判明したことで「絶滅の撤回」が実現した稀有な例でもある。なぜこのようなことが可能になったのか、以下にその要因を記そう。
1. 捕食者のいない避難場所となる環境
ボールズ・ピラミッドは、過酷で不毛な海食柱で、ほぼ垂直に切り立った崖で構成され、植物もほとんど生えていない。ネズミはおろか、他のあらゆる種類の捕食者が存在しない場所だ。ここでは、海の塩水や風が吹き付けるほかは、背の低い灌木が多少生えているだけだ。このような孤立した環境は、大半の生物にとっては過酷なものだが、ロードハウナナフシにとっては完璧な場所だった。ネズミがいないことで、この昆虫は生き延びることができた。
2. 1本の灌木をすみかとしていた
報告書を見ると、今知られている個体群はその全体が、耐性の強い灌木の下、あるいは周辺で生き延びていた可能性が示唆されている。岩に張り付くように生えている、このごくわずかな緑が、ロードハウナナフシに、食物と雨風をしのぐ場所を与えていた。かつては森の至るところで見られた種が、たった一つの岩壁に生えた1本の灌木の下に何十年にもわたって生きていたと考えると、これは驚くべきことだ。
3. 生物学的な強靭さ
2023年に『Genome Biology and Evolution』に掲載された、ロードハウナナフシの生活史と繁殖行動に関する研究論文によると、この種の昆虫において、少ない個体数でも生存率を向上できる形質が見つかったという。これには、ゆっくりした生殖サイクルや、成虫になってからの寿命の長さ、さらには、個体密度が低い状況でも容易に交尾できる能力などが挙げられる。
さらに、飼育環境下での初期的な観察によって、ロードハウナナフシに単為生殖ができる可能性が浮上した。これは、ナナフシの多くの仲間によく見受けられる形質で、オスとの交尾に成功しなくても、孵化能力のある卵を生むことができるという能力だ。ただし、査読済みの論文ではこの点を裏づけるものがない上に、ゲノム分析のエビデンスからは、この種の昆虫が、主に有性生殖で繁殖していることが示唆されている。


