ローテク適応
そこでロシア軍は、探知されやすいシグネチャーを減らせるローテクな代替手段を試してきた。たとえば、ドローンに見つかりにくいように、補給物資の輸送にロバなどの駄獣(荷役動物)を活用している。馬やラクダを用いた事例も知られるほか、兵士は電動スクーターで戦闘に向かうこともある。
ロシア軍の突撃では現在、ごく少人数(通常2〜3人)の歩兵部隊でウクライナ軍の陣地への浸透を図る戦術が採られることが多くなっている。各部隊はいったん取り付くと、壕にこもり、多くの場合、ドローンから補給を受ける。
ロシア軍の将軍たちは、ウクライナ軍の防御線に探りを入れるために、利用可能な手段は何でも用いている。なかには、地下のパイプを通じて兵士を送り込むというものもあり、ロシア側の報道によれば窒息による犠牲者も出ているとされる。
復活というより「末期症状」
馬の利用はたんなる場当たり的な対応ではない。ロシアの経済紙コメルサントは10月、ロシア軍がウクライナの前線で行動する突撃部隊に騎兵隊を導入することを検討していると報じた。同紙によると、第9独立親衛自動車化狙撃旅団の訓練場で訓練が行われており、兵士2人が1頭の馬に乗り、接近後に下馬して攻撃するといった戦術が試されているという。
ただしコメルサントは、騎兵隊が復活したとしても限定的であり、おおむね象徴的なものにとどまると強調している。結局、車両が容易に探知されるような地形では、馬がもたらすメリットはあまり大きくない。
騎乗部隊の復活は、ドローンに支配された戦場でロシア軍の行動の自由が奪われてきたことの表れだ。補給車列が常に空に対して露出した状態になる場合、軍隊はより素朴な移動手段の活用に追い込まれる。だがウクライナの戦場では、そのような手段ですら攻撃から守られる効果は薄い。ここでの教訓は、騎兵が何か役に立つものとして戦場に復活しているということではなく、ドローンの存在により、もはや戦場を安全に移動する手段がほとんど残されていないということだ。


