サンタクロース観光も盛んに
フィンランド北部のロヴァニエミは、世界的に「サンタクロースの故郷」として知られる観光拠点だ。ここには「サンタクロース村」というテーマパーク的観光地があり、年間60万人以上の観光客が訪れている。
「サンタクロース村」には、フィンランド政府や観光局が公認している公式のサンタクロースがいて、一緒に写真を撮ったり話したりすることができる。
とはいえ、この写真や動画は個人的に撮ることはできず、サンタの下で働く妖精(エルフ)の格好をしたカメラマンによって撮られ、それを買い取る形となる。こうしたシステムは、サンタさんがなかなかの「資本主義者」であることを示唆するものだが、それは大人の事情で、喜ぶ子どもたちにまではわからない。
さらに、近年は海外からの観光客の増加により、2023年のロヴァニエミへの観光客数は120万人超に達した。この数値は前年から約30パーセントの増加を示しており、まさに「冬の王国」としての地位を確立している。
こうした観光増加は地域経済にとって歓迎すべきニュースだが、同時に「オーバーツーリズム」として問題視される面もある。観光客数の増加は宿泊施設の逼迫、地域インフラへの負荷、住宅価格の上昇などを引き起こし、地元住民との間で摩擦を生むケースも報告されている。
フィンランド政府や地域自治体は、観光を持続可能な形で発展させる方法の模索を始めている。特にラップランド地域では環境保全の視点から、観光インフラの計画的な整備、地域住民との共生、自然環境の保護を重視したガイドライン作成が進んでいる。
しかし、事態は単純ではない。観光開発が自然環境や先住民族「サーミ」の伝統的な暮らしに与える影響を懸念する声もあり、観光振興と文化や自然保護のバランスをどう取るかが重要なテーマになっている。
ミス・フィンランド騒動は観光に打撃
2025年12月、「ミス・フィンランド2025」のサラ・ザフチェ(Sarah Dzafce)さんがSNSに投稿した写真が大きな論争を呼んだ。投稿には、目の形を手で引っ張るようなジェスチャーと、アジア人を揶揄するように受け取られるキャプションが添えられていた。この行為は多くの人々やメディアから人種差別的なジェスチャーとして批判され、結果として彼女はタイトルを剥奪された。
この騒動は国内だけでなく、アジア各国にも外交問題として波及した。日本や韓国、中国の政府が懸念を伝え、フィンランド首相が公式に複数言語で謝罪を発表する事態となった。また、この事件を受けてフィンランド航空を含む企業に対しブランドへの悪影響が指摘され、SNS上ではボイコットを訴える声も出ている。
この事件は、フィンランド社会の人種感受性や多文化受容についての議論も呼び起こした。一部ではフィンランド社会が多文化社会への対応で遅れているとの声もあり、国内外でフィンランドの国際的イメージに一時的な影響を与えた。政治家による類似ジェスチャーの投稿も批判を強め、政府関係者が謝罪に追い込まれる事態ともなった。
この種の事件は、観光業に直接的な打撃を与える可能性がある。アジアはフィンランド観光市場にとって重要な地域の1つであり、文化的摩擦や人種差別と受け取られる行為は旅行需要の減退やブランド価値低下につながるリスクを抱える。観光立国として、文化的敏感性の向上と国際的協調が求められている。


