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2026.01.03 13:30

建設業界再編の旗手が語る「構想」:インフロニア・ホールディングス 岐部一誠

岐部一誠|インフロニア・ホールディングス 代表執行役社長 兼 CEO

岐部一誠|インフロニア・ホールディングス 代表執行役社長 兼 CEO

「前に進むのもいばらの道、後退するのもいばらの道。TOB(株式公開買い付け)成立の見込みが高まっても、安心する気持ちとは程遠かった」

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インフロニア・ホールディングス(HD)が実施した三井住友建設に対するTOBは、2025年9月18日に成立。再編劇を仕掛けた岐部一誠はTOB期間の心境をこう振り返った。

インフロニアHDは、22年に東洋建設にもTOBを実施している。もともと20%を保有する筆頭株主だったが、「セイムボートに」と完全子会社化を目指したのだ。買収には東洋建設経営陣も賛同。しかし投資ファンドの対抗提案で不成立に終わっている。

今回も構図は似ていた。岐部は、株式100%の取得を条件にオファーを出した。財閥系企業には抵抗感のある提案だったが、三井住友建設や銀行は賛同。気がかりは、株を買い増していた旧村上ファンド系投資会社だった。

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「終了約1週間前に投資会社がTOBに応募したと一報が入ったときにおそらく成立するだろうなと。ただ、市場は理屈通りにならない。終了日の昼ごろに私たちが目指していた66.7%を超えたと連絡が入るまで気は抜けなかったですね」

このTOB成立で、売上高は大手ゼネコン5社に次ぐ6位の規模になる。ただ、喜んでばかりはいられない。目指す頂きは高く、道のりも険しいからだ。

岐部が描くのは「脱請負」、そして総合インフラサービス企業への変革である。グループ中核企業である前田建設工業は106年の歴史をもつゼネコンだが、なぜ新たな道を行くのか。岐部の人生とともに紐解いてみよう。

「前田建設工業を就職先に選んだのは、内定をもらった会社のなかでいちばん小さかったから。大手に入ると、自分が権威主義になるんじゃないかと心配でした」

入社経緯をこう振り返るように、岐部は反権威主義の人だった。幼いころから教師の言うことは聞かず、野球はセ・リーグよりパ・リーグ。その精神は、入社して現場を経験するなかでさらに強くなった。

「かつての現場では両隣の工区に大手がいて、『しょせんお前らは準大手』という態度。この構造が続くかぎり業界に未来はないと感じていました」

その問題意識にグローバルの視点が加わったのは98年に総合企画部に異動してからだ。岐部はIRで海外の投資家を訪問する経営陣をサポート。出張の合間を縫って、欧米各地のゼネコンを訪ね歩いた。何度も訪問するなかで見えてきたのは、コンセッション(公共施設の所有権を公的機関がもったまま、運営権を民間事業者に売却する方式)へのシフトだった。

「欧州はEUで安い労働力が流入して価格競争になり、建設工事で利益が出にくくなっていた。『コンセッション増加の理由はそれ』とドイツの最大手ホッホティーフ社に仮説をぶつけたら、『そこまで調べてきたなら教えてやる』と狙いを教えてくれました」

要諦はこうだ。公共施設の運営でコストが最も大きく変動するのは、「床や壁、照明が壊れた」といった維持管理費。最初から管理しやすいよう建設すれば効率的に運営ができる。そこに建設会社が主導してオペレーションする優位性がある──。

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文=村上 敬 写真=榊 水麗

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