アート

2025.12.25 16:15

変化の時代、「ブレない軸」を持つには? 世界を魅了する日本画家・長谷川幾与に学ぶ経営のスタンス 

長谷川幾与「providence VI(2024年)」。奈良の仏像からインスピレーションを得て描かれた

長谷川幾与「providence VI(2024年)」。奈良の仏像からインスピレーションを得て描かれた

変化の時代、ビジネスリーダーの道標となるのは、もはや過去のデータや成功体験などではありません。自らの哲学や美意識といった内発的な動機が、中心にあげられます。しかし、それらについて聞かれて、澱みなく答えられる人は一体どれくらいいるでしょうか。

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今回は、日本的な霊性を抽象表現で描き出し、世界で高く評価されている日本画家の長谷川幾与(はせがわきよ)さんにインタビュー。私、岩渕と本連載の共著者、ボストン コンサルティング グループ(BCG)の平岡美由紀さんが、長谷川さんの創作活動の軸や発想方法、世界における日本画の可能性に迫りました。

内なるビジョンを研ぎ澄まし、日本の精神性を世界の文脈へと昇華する彼女の姿勢は、日本のビジネスリーダーたちに示唆を与えるものでした。

発想の源は「自己を超えた存在」とつながる感覚

長谷川幾与さん。日本の現代アートを世界に発信する国際的ギャラリー「ア・ライトハウス・カナタ」に所属
長谷川幾与さん。日本の現代アートを世界に発信する国際的ギャラリー「ア・ライトハウス・カナタ」に所属

岩渕:まずは長谷川さんの初期衝動──制作を始められたきっかけを伺えますか。

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長谷川:頭の中に特定の景色や空気感、あるいは心地良いと思える風景みたいなものがあって、絵を描くことでそれを追ってきた感覚があります。最近では、神社仏閣に足を運び、その風景に思いを巡らせています。すると崇高な気配というか、自己を超えた存在とつながるような感覚を覚えるんです。

平岡:「providence VI」という作品も、仏像をモチーフにされたと聞きました。過去に他のインタビューで、神社や仏閣に行くとインスピレーションが湧くと語られていますが、例えば何が頭に浮かぶのでしょうか。

長谷川:もともと漠然と描きたいもののイメージや場所があり、実際にそこに足を運び、対象と向き合うと、頭の中ではっきりとその図が見えるようになる感じです。とは言え、意識的にそれができるようになったのは、ここ5年くらい。技術を磨いたことや、それによる自信のような感情が合わさり、イメージしたものをクリアに捉えて描けるようになってきました。

実は大学時代は、他のアーティストへの憧れや、「こうした方がもっと認められるのではないか」と、外からの評価を強く意識することで、自分が描きたいものからずれていた時期が長かったんですね。

でも、いくら他の人の価値観に合わせて作品を生み出してもいいものにはならないし、本気でそれを追求している人たちに勝てるわけがありません。だから目を閉じた時に、自然とイメージできるものを描くようになりました。そして、ようやく「これかな」と思えるようになりました。

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文=岩渕匡敦

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