岩渕:長谷川さんの作品には、欧米の抽象の概念を押さえた上で生み出された、国を超えた崇高さがある。そこに、日本的な美しさと細部へのこだわりが見事に融合している。だからこそ、世界のリーダーの心を捉えるのですね。
自分が本気で愛さないものを、人が愛することはない

今回のインタビューでは、多くの気づきと学びがありました。長谷川さんが体現する、ブレないビジョンをもって妥協せずに市場と向き合い、結果を出し続ける姿勢。これは本来、企業経営者やビジネスリーダーが持つべきスタンスだと思うのです。そしてそれを単純な日本的な良さの訴求ではなく、欧米の歴史的文脈や崇高な概念と融合させて高いレベルで作品に昇華させる。それは大変な努力の上に成り立っているはずです。
前職のBCG時代に対談したイノベーションの専門家、ロベルト・ベルガンティ教授が、徹底した美意識と哲学をもとにiPhoneを作り上げたスティーブ・ジョブズを例に挙げ、「自分が本気で愛さないものを、(他の)人が愛することはない」と話されていたことを思い出しました。自分も経営者として、軸をぶらさず夢の実現に向けてがんばっていきたいと改めて勇気づけられました。
日本のオーセンティックな価値観が世界から注目される中、文化庁もその価値を多言語化し、世界に発信するための動きを取っています。世界市場で、日本のアーティストと経営層が互いに学びながら成長していく世界を、作っていきたいと思いました。
※出典: Nathalie Lyssenko & Christoph Redies & Gregor U Hayn-Leichsenring(2016) 「Evaluating Abstract Art: Relation between Term Usage, Subjective Ratings, Image Properties and Personality Traits」Frontiers in Psychology


