地球の生命の材料物質は、どこから得られたのだろうか。地球の生命の発生は、水や炭素に富む小惑星によって運ばれる有機物質の供給が要となった可能性が高い。生命(アミノ酸を含む)の材料となったと考えられるこれらの水や有機物質の大半は、初期太陽系のはるか遠くからやって来たとする説がこれまで提唱されてきた。
だが、学術誌Nature Communicationsに掲載された論文で、筆頭執筆者の英インペリアル・カレッジ・ロンドンの地質学者マシュー・ゲンジと研究チームは、生命材料物質の起源について、太陽系の巨大ガス惑星である木星の近くで激しい乱流が起きていた領域にあると主張している。
インペリアル・カレッジによると、今回の研究結果は、宇宙航空研究開発機構(JAXA)の無人探査機はやぶさ2が地球に持ち帰った、炭素に富む小惑星リュウグウのサンプル(試料)から得られた証拠に基づくものだ。
ゲンジは自身の研究室で取材に応じ、今回の研究では、炭素と水に非常に富む小惑星のリュウグウから採取された微小な岩石の粒であるマイクロコンドリュールを調査したと語った。この種の小惑星は、全ての炭素と水を地球にもたらした可能性があると、ゲンジは続ける。
サンプルを調査した結果、このタイプの小惑星のまったく新しい形成過程を示す証拠が見つかったという。おそらく小惑星が形成されたのは、遠く離れた場所だけではなくて、初期太陽系が乱流状態にあった領域だろうと、ゲンジは指摘する。炭素と水に富む粒子が濃集されるのが、この領域内なのだという。
ゲンジによると、今回調査したリュウグウの試料は直径がわずか1mmだ。「隕石を調査している人々にとってこれは非常に小さいが、自分にとっては大きな石だった。なぜなら、大きさがこれの10分の1のものを調べるのにすっかり慣れてしまっているからだ」とゲンジは話す。
インペリアル・カレッジによると、研究チームは走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて、驚くほど多数のマイクロコンドリュールを同定することに成功した。この微小な球粒は当初はガラス状で、後に小惑星の表面で氷が解けてできる水によって変質したという。今回の同定に成功したのは、ミリサイズのリュウグウ試料のX線CTスキャンで、マイクロコンドリュールが持つ硫化物の周縁部を確認できたおかげだと、インペリアル・カレッジはコメントしている。



