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2025.12.26 17:15

金融×AIの「分水嶺」を超えてSMBCグループとSakana AIが見据える未来

三井住友フィナンシャル(SMBC)グループの磯和啓雄CDIO(左)とSakana AIの伊藤 錬COO(右)

三井住友フィナンシャル(SMBC)グループの磯和啓雄CDIO(左)とSakana AIの伊藤 錬COO(右)

Forbes JAPAN 2026年2月号」では、2026年版経済予測「新時代がわかる『100の問い』」を特集。2025年のノーベル経済学賞受賞者である米ノースウエスタン大学ジョエル・モキイア教授への独占取材をはじめ、表紙にはアンソロピック共同創業者兼社長のダニエラ・アモディが登場、世界AI最前線を追っている。

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特集内で登場するAI企業の一つが、日本最速でユニコーンに達したSakana AIだ。同社はシリーズA資金調達で三井住友銀行から出資を受けている。金融×AIの「分水嶺」を超えて三井住友フィナンシャル(SMBC)グループとSakana AIが見据える未来とは――。ふだんから交流のあるSMBCグループの磯和啓雄CDIOとSakana AIの伊藤 錬COOにAI開発の現在、金融業界の未来について語ってもらった。


磯和啓雄(以下、磯和):2024年までは生成AIが「すごいぞ」と盛り上がりを見せましたが、現在はハイプ・サイクルの「幻滅期」に入っていると言われています。特に「エージェントAI」への期待値は高かったものの、実務での活用はどうなのか。2026年に向けてどう変わっていくのか、このあたりから紐解いていきたいと思います。

伊藤 錬(以下、伊藤):SMBCグループの戦略サイクルと技術のサイクルが、偶然にも非常に符合していると感じています。技術的にも今は「何に使えるかわからない」という模索の時期でしたが、あと半年ほどで「幻滅期」ではなく「分水嶺」が来ると見ています。つまり、「これには使える」という確かな手応えが技術的に見えてくる時期が目前に迫っているのです。

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磯和:我々がこの数年、どのようなスタンスで取り組んできたかをご説明します。2024年10月に、中期経営計画の残り期間と次期中計分を合わせ、AI関連で500億円の予算を別枠で設定しました。あえて優先順位をつけず、何でも取り組んでいこうという狙いです。

伊藤:500億円というのは凄まじい規模ですね。

磯和:AIはROI(投資利益率)が見えにくいものです。最初から正解がわかるなら苦労しません。ですから、金額を小さく区切り、「まずはPoC(概念実証)をやってみよう」と現場に促しました。結果、昨年10月からの1年で約50件の案件に予算を付け、走らせてきました。

伊藤:そのスピード感は、2017年から続く「CDIOミーティング」という土台があったからこそですね。

磯和:おっしゃるとおりです。デジタル新規事業のために3年間で350億円の投資枠をもち、スピーディーに審査する仕組みがすでに馴染んでいました。そこにAIを乗せただけなので、初動が早かった。ただ、そろそろ拡散のフェーズから、注力分野を見極めてスピードを調整する「まとめ」のフェーズに入りつつあります。その注力案件の一つが、Sakana AIと取り組んでいる「資料作成業務へのAI活用」です。これはアプリケーションレイヤーが得意な業者さんだけでは完結しません。LLM(大規模言語モデル)の深い挙動や使い方まで踏み込まないと、本当に良いものはできないと判断し、Sakana AIとPoCを始めました。

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編集 = 井関庸介 写真 = 若原瑞昌

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