伊藤:組織論と働き方の両面で変化が求められますね。特に開発の領域では、「Vibe Coding(バイブコーディング)」のように、自然言語で簡単にコーディングができるようになります。そうなると、どこまで内製し、どこまで外注するかの線引きが大きく変わってくるでしょう。
磯和:おっしゃるとおり、「EUC(エンドユーザーコンピューティング)の復権」とも言える状況が来ます。社員が自分でアプリを作れるようになると、いわゆる「野良アプリ」が次々と生まれる。これまでは「野良=悪」として根絶してきましたが、これからは「良い野良アプリ」を推奨し、従業員そのものを開発リソースとして捉える転換が必要です 。
伊藤:営業担当の横にIT担当が座るのではなく、営業担当自身が作れてしまう時代ですからね。
磯和:ただし、セキュリティやガバナンスの観点では「やってはいけない野良」の線引きも明確にしなければなりません。銀行は信用が第一の「社会の砦」です。守るべきところは死守しつつ、攻めるところでは従業員の自律的な開発を許容する。このバランスをマネジメントすることが、これからの組織の強みになるのではないでしょうか。
金融機関に進化を促す「プログラマビリティ」
磯和:2026年を見据えた時、私の頭の中では「AI」「ステーブルコイン」「量子コンピュータ」の3つが密接につながっています。これらを統合するキーワードが「プログラマビリティ」です 。
伊藤:とても興味深い視点ですね。量子コンピュータはAIとステーブルコインを支える計算基盤になり得るかもしれません 。
磯和:かつてもプログラマビリティはもてはやされましたが、実装手段が追いついていませんでした。しかし、AIがプログラムを書き、ステーブルコインという「ビークル(乗り物)」に乗せることで、本当の意味での自動化やカスタマイズが可能になります。例えば、資金運用で「不動産と為替の比率を調整し、全体を最適化する」といった指示をプログラムしておけば、AIが自律的に運用してくれる世界です。
伊藤:昔のプログラマビリティは「技術的に可能」というレベルでしたが、今は「自然言語で自由にカスタマイズできる」という意味合いに進化していますね。そして、それをトラッキング可能なステーブルコインで実行する。
磯和:そうです。特にトレーサビリティの観点では、融資した資金の使途確認や、自治体の給付金の用途限定などにブロックチェーン技術を活用することで、業務効率とリスク管理が劇的に向上します。これまで膨大な人手をかけていた「モニタリング」業務が、プログラム一つで完結するようになるでしょう。


