北米

2025.12.21 09:00

米軍の自爆ドローン部隊「スコーピオン・ストライク」の虚実 中東配備の米国版シャヘドは「見せかけ」か

米中央軍の作戦地域内の基地で2025年11月23日、駐機場に置かれた低コスト無人攻撃機「LUCAS」(US Central Command Public Affairs)

LUCAS/FLM131は、FLM136より小型の弾頭を搭載した別個のプロジェクトという可能性もある。いずれにせよ、米国のドローンの破壊力はイランとロシアの同種のドローンの数分の一にとどまるようだ。

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LUCASの調達計画数は?

国防次官室のローも言及しているように、LUCASのポイントはドローンを大量に生産するという点にある。

ローはLUCASについて「迅速に大量生産したいと考えています」と述べ、「メーカーは1社ではありません。複数のメーカーに発注して、量産できるように設計されています」と続けている。

LUCASを大量に生産・配備すれば、敵の防空網を飽和させて消耗させたり、多数の目標を攻撃したり、あるいは長期にわたって攻撃を持続したりできる。これらはどれも少数のミサイルでは不可能なことであり、ウクライナでの戦争では実際に行われていることでもある。

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米軍事メディアのザ・ウォーゾーン(TWZ)は米中央軍の報道官の話として、LUCASの価格は1機あたりおよそ3万5000ドル(約550万円)と伝えている。これは、ドナルド・トランプ米大統領が今年5月に訪問先のカタールで行った記者会見で、イランのドローンのコストとして言及した「3万5000ドルから4万ドル(約630万円)」という数字と重なる。この数字を含む発言は、先に触れたようにLUCASに似たドローンが7月にペンタゴンで展示された際、そばに設置されていた広告板でも引用されていた

米中央軍も米陸軍も、LUCASの調達計画数は公表していない。

ただ、米陸軍の調達統括機関、契約コマンド(ACC)がスペクターワークスと締結した契約に関する情報は開示されている。それによると、契約は「FLM131 LUCASの継続生産」(FLM136でなくFLM131である点にも留意されたい)と題され、期間は2025年7月24日(これは国防総省での展示の翌週だ)から2025年12月31日まで、総額は3000万ドル(約47億円)となっている。

この3000万ドルが全額LUCAS本体の取得に充てられ、発射用カタパルトや地上管制装置、通信機材、予備部品、訓練用品といった支援装備にいっさい使われないと仮定すると、ドローンの単価3万5000ドルで計算した場合、この契約で調達されるのはざっと850機ということになる。

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翻訳・編集=江戸伸禎

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