2025年10月25日発売のForbes JAPAN12月号第一特集は、「新いい会社ランキング2025」特集。上場企業を対象にした毎年恒例の大企業特集では、今年は「ステークホルダー資本主義ランキング」と、新たに「ESGフィット度ランキング」の2つを掲載している。ステークホルダー資本主義ランキングは、「地球(自然資本)」「従業員」「サプライヤー・地域」「株主」「顧客・消費者」の5つのカテゴリーで解析。ESGフィット度ランキングでは、サステナビリティ情報開示の義務化が進むなか、ESGの取り組みを自社の「稼ぐ力」につなげている企業を導き出した。同号では2つのランキング、IPOランキング上位の11企業の経営者インタビューを一挙掲載している。
日本が掲げる「2050年までにカーボンニュートラル」の実現に欠かせないのが、航空業界のCO2排出量の削減だ 。 イノベーティブな手法が求められるなか、「廃棄物で空を飛ぶ」可能性に注目が集まっている。
航空機は、交通機関のなかでも輸送単位当たりの二酸化炭素(CO2)の排出量が多い乗り物だ。海外を中心に「飛び恥」(Flight Shame)とやゆする声もあるなか、脱炭素に向けたさらなる取り組みが求められている。
そこで今、注目を集めているのが「SAF」(Sustainable Aviation Fuel/持続可能な航空燃料)だ。廃食油やサトウキビなどのバイオマス燃料や、都市ごみなどの廃棄物を原料に使った航空燃料を指す。SAFを使えば、製造から使用までのライフサイクル全体で約60-80%のCO2排出量削減効果を期待できる。SAFの活用に力を入れる日本航 空(JAL)のESG担当役員・小川宣子に、SAFの可能性と課題を聞いた。
──JALは2020年に、日本の航空会社として初めて「50年までにCO2排出量実質ゼロ(ネット・ゼロエミッション)」を掲げた。ネット・ゼロの実現に向けて、JALではSAFをどう活用していくのか。
小川宣子(以下、小川):SAFはJALのESG戦略における重要な役割を果たしている。当社では、30年度までに全燃料搭載量のうち10%(約40万kl)をSAFに置き換えるという目標を掲げている。足元の「25年度に1%」(約4万kl)という目標達成に向けては調達のめどが立っている。
──SAFはどこから調達しているのか。
小川:国産のSAFはコスモ石油から購入し、足りない分は海外から調達している。
──SAFの安定的な利用を実現するためには、原料不足やコストの高さなど、さまざまな課題を乗り越える必要がある。
小川:SAFを本格的に導入するためには、多くの廃食油が必要だ。JALでは23年から企業や自治体、団体と連携し、一般家庭や店舗で発生する廃食油を原料にしたSAFで航空機を飛ばす「Fry to Fly Project」に参画している。また、全国126カ所(25年9月時点)のスーパーなどで消費者から廃食油を回収する、「すてる油で空を飛ぼう」プロジェクトも展開中だ。取り組みを通じて一般市民の皆様の社会貢献活動への参加を後押しし、ESGのS(社会)にもつなげている。
共同調達にも力を入れている。ワンワールドアライアンスメンバーとともに、米国の複数のSAFメーカーとの購入契約を締結している。複数の航空会社が連携することでSAFの普及や市場の拡大に貢献し、脱炭素の流れを促進している。



