サイエンス

2025.12.25 17:00

4時間しか睡眠を必要としない「ショートスリーパー」が存在する理由とそこに潜む危険

Shutterstock.com

近年の研究で、話はさらに複雑になった。習慣的な睡眠時間に関するゲノムワイド関連解析(GWAS)によって、睡眠時間は非常にポリジェニックであること(多くの遺伝子が関わっていること)が示されたのだ。つまり、平均睡眠時間に関して、「時間」ではなく「分」という、より短い単位で影響するような「よくある遺伝子変異」が何十種類も存在する、ということだ。

advertisement

重要なのは、普通の人たちの睡眠にみられるこうした遺伝の基本構造は、家系研究で見つかったFNSSのような、影響の大きい希少な変異とは別物だということだ。『Nature Communications』誌で発表された、UK Biobank(英国で行われている長期大規模バイオバンク研究)の参加者44万6000人以上に対する大規模GWASでは、自己申告の睡眠時間と関連する遺伝子座が多数、特定されている。これは、大多数の人に見られる短時間睡眠は、FNSSとは違うことを意味している。 

FNSSに見られる希少な変異は、研究対象の人間(および動物)において、明らかな悪影響のない短時間睡眠を可能にした。しかし、そのような変異は極めてまれなものだ。いわゆる「ショートスリーパー」の大多数は、遺伝的にも生物学的にも、FNSSの人たちとは異なっている。したがって、「睡眠を削っても問題ない」と一般化してしまうのは賢明ではない。特定のまれな遺伝子型が、そのような表現型を生み出せるという話でしかないからだ。

以上をまとめると、次のようになる。

advertisement

1. 必要な睡眠は、遺伝によって変わることがある
DEC2、ADRB1、NPSR1といった単一遺伝子のまれな変異が示しているように、生物学的な仕組みによって、明らかな悪影響を伴うことなく必要な睡眠が減る場合がある。

2. 短時間睡眠の大半は、それとは別の話だ
一般的な遺伝的変異は睡眠時間を数分単位で変化させるにすぎず、ほとんどの人の場合、生活習慣、仕事、健康状態によって睡眠不足が生じる。大規模研究では、睡眠は非常にポリジェニックなものであることが示されている。

3. 自分は「遺伝によるショートスリーパー」だ、と思い込んではならない
5時間睡眠で平気なら、幸運な変異を持つ一人である可能性はある。しかし、家族歴や遺伝子を調べなければ断定できない。また、仮にそうした変異の保有者であっても、人間に関する長期データは依然として限定されている。

forbes.com 原文

翻訳=緒方亮/ガリレオ

タグ:

advertisement

ForbesBrandVoice

人気記事