不眠や孤独感を訴える人は多い。高級な枕やリカバリーウエアを購入したり、地域のイベントに参加したり旅行したりと、さまざまな対策が考えられるが、外的な要因だけでなく、自分自身の内面にある「心の力」に目を向けることに大きな効果があるようだ。自分をやさしく思いやる「セルフ・コンパッション」が、こうした悩みの解消につながることが、ライフスタイル精神医学の研究により実証された。
家族や友人を思いやるように、自分のこともいたわり思いやるセルフ・コンパッションが、自己肯定感や幸福感を呼び起こすことはよく知られている。
また、「自分で決めたい」(自律性)、「自分にはできると感じたい」(有能性)、「誰かとつながっていたい」(関係性)の3つの心理的欲求が満たされると心の状態が最適になり健康的な行動をとりやすくなるという「自己決定理論」も近年では重視されている。
しかしこうした内面的な行動は、「気持ちの持ちよう」や「病は気から」のような、文字どおり「気休め」に聞こえてしまう。本当に効果があるのだろうか。そこで畿央大学、新潟医療福祉大学、インドネシアのハサヌディン大学による研究チームは、セルフ・コンパッションと自己決定理論が、具体的な生活習慣、おもに不眠や孤独感にどう影響するかを検証した。
研究チームは20〜59歳の日本人400人を対象に、自己への思いやり、基本的な心理的欲求の充足度、不眠症状、孤独感を測定し、それらの関係性を分析したところ、次の2つのことが確認された。

ひとつは、セルフ・コンパッションが高い人は不眠症状が有意に低下することだ。自分にやさしくすることで心理的欲求が満たされ、結果として安心してよく眠れるようになるという仕組みだ。「セルフ・コンパッションが不眠を改善する効果は、この心の欲求の充足によって完全に説明される」という。



