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2026.01.12 10:15

ノーベル賞受賞者・山中伸弥が若き日に再認識した実験のおもしろさ

Getty Images

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2012年にノーベル生理学・医学賞を受賞した山中伸弥さん。iPS細胞という画期的な発見の原点には、予想外の実験結果に心から興奮した経験がありました。

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医者をめざしたものの、うまくいかず研究者の道へ。大学院で最初におこなった実験で、指導教官の仮説とはまったく違う結果が出ます。

予想外だからこそ、おもしろい。その原点は、子どものころ、時計やラジオを分解せずにはいられなかった好奇心にありました。山中伸弥さんの著書『夢中が未来をつくる』(サンマーク出版)から一部抜粋、再構成してお届けします。


自分はやっぱり研究者が向いている!

基礎医学の研究者になろうと大学院に入り直したとき、私はまだ医者への道をあきらめたわけではありませんでした。

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博士号の学位をとったら、また臨床医にもどってこようという気持ちもあり、いったん基礎医学の世界にちょっと逃げこんでみたというのが正直なところです。

しかし、大学院で最初におこなった実験が、その後の私の運命を決めてしまいました。自分はやはり研究が向いていると、心から実感したのです。

実験をするときには、まず何らかの仮説を立てます。そして、その仮説が正しいかどうかを実験によって確かめていくという流れです。

私は当時、大学院に入ったばかりの学生だったので、指導教官が立てた仮説に基づいて実験をおこなうことになりました。

その仮説というのは、「ある物質を投与すると、血圧が下がらなくなる」というものです。

さっそく、犬を使って実験をすることになりました。指導教官が「血圧が下がらなくなる」とした物質を犬に注射し、次に血圧を下げる薬を注射します。指導教官の立てた仮説が正しければ、犬の血圧は下がらないはずです。

ところが実験をおこなってみると、思いもよらない結果になりました。下がらないはずの血圧が下がりはじめ、一度は元にもどりましたが、ふたたびぐんぐんと下がっていってしまいます。「血圧が下がらなくなる」のではなく「血圧がもっと下がった」のです。

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文=山中伸弥/京都大学iPS細胞研究所名誉所長

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