キャリア

2026.01.12 10:15

ノーベル賞受賞者・山中伸弥が若き日に再認識した実験のおもしろさ

Getty Images

今度は、すぐには回復しません。このまま下がり続けたら犬が死んでしまうのではと心配になるほど、どんどん下がっていきましたが、あるところまでいったら、じわじわと元の血圧まで回復していきました。

advertisement

私は、この結果に、かつてないほどの興奮をおぼえました。予想外の実験結果にも驚きましたが、それよりも、自分のあまりにも強烈な反応に驚いたのです。すぐに研究室を飛び出して指導教官の部屋に駆けこみ、こう叫びました。

「信じられないことが起こりました! 先生の仮説はまちがっていましたが、すごいことが起こりました!」

指導教官も驚いて「そうか! それはすごい」と言って研究室に行き、実験の結果を見ながらいっしょに興奮してくれました。

advertisement

そのとき、私は心の底から思ったのです。

「自分は研究が好きなのだ」と。

実験の結果は、仮説どおりではありませんでした。それどころか、まったく予想もしない変化が起きたのです。

でも私にとっては、それこそが心の底から興奮しワクワクすることだったのです。

機械を分解するのが好きだった少年時代

振り返ってみると、子どものころ、時計やラジオを見ると「このなかはどうなっているんだろう?」「どんなしくみで針が動いたり、音が鳴ったりするんだろう?」という疑問から湧き出る衝動をおさえられず、ネジを回して分解してしまったものです。

分解して中身を見たら、元にもどそうと思うのですが、どうしても元どおりに組み立てられません。部品が一つ余って時計が動かなかったり、ラジオから音が出なくなってしまったりします。

母からはいつも、「伸弥が分解すると、動かなくなっちゃうんだから」と怒られていました。

父は黙って、動かなくなってしまった時計やラジオを直してくれました。それでもまた、私は分解してしまいます。どうしても、しくみを知りたいという好奇心をおさえられないのです。

また、自分で科学実験をやってみるのも大好きでした。毎月買っている科学雑誌についてくる付録で、いろいろな実験をしていました。

次ページ > 実験の怖さを知った出来事

文=山中伸弥/京都大学iPS細胞研究所名誉所長

タグ:

advertisement

ForbesBrandVoice

人気記事