仕事を進めるうえで、上司を説得しなければ進まない。上司と部下で考えが食い違う――。職場においては、さまざまな場面でコミュニケーションの壁があり、直面している人は少なくないでしょう。
映画監督として22年間、数々のプロジェクトを進めてきた飯塚健さんは、「上がわけがわからなくて」と愚痴をこぼすケースの7、8割は、受け取る側の力不足に原因があると言います。飯塚さんの著書『晴れのシーンを撮る日に、雨が降ったら?』(サンマーク出版)から一部抜粋、再構成してお届けします。
すべてのアドバイスは「自分」しだい
映画というプロジェクトは、かける予算が大きくなるほど、関係者の人数が増えてくる。
業界の人たちだけではなく、スポンサーや協賛企業など、映画制作以外の人もかかわってくると、意見がまとまりにくくなる。
想定外の意見を聞いて、交渉するのも、監督の仕事である。
とくに気をつけたいのは、決裁権を持つ人。
そして、そういう方々の「思いつきのひと言」である。
俗に言う偉い人に「へえ、それおもしろいの?」「もっとこうできないの?」と言われたら、無視するわけにはいかないのは、どの業界も同じだろう。
職場でも、事情をよく知らない上司のひと言で、決定をくつがえされたり、ふり回されたりした経験は、だれだって持っているはずだ。
「あの人、何とかしてくれ」という気持ちは、わからなくもない。
だが、そういう人物が現れたとき、前提としていつも自分に問うことがある。
それは、「本当にその方が言っているのは、わけもわからない、とんちんかんなことなのか?」ということだ。



