映画

2025.12.27 10:15

山田孝之に見た「脚本を上回る芝居」ができる俳優の凄み

映画『ステップ』公式サイトより

映画『ステップ』公式サイトより

会社や上司の指示を受けて取り組む仕事。指示通りにできれば合格点ですが、中には言われていないことまで理解して、自ら考えて工夫できる人がいます。

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映画監督として22年間、数々の俳優と仕事をしてきた飯塚健さんは、撮影現場で「想像力」に長けた人たちの共通点を見出してきました。脚本に書かれていないことまで理解し、最高のパフォーマンスを生み出す力とは。飯塚さんの著書『晴れのシーンを撮る日に、雨が降ったら?』(サンマーク出版)から一部抜粋、再構成してお届けします。

「書いてない部分」まで理解する

これまでたくさんの俳優と仕事をしてきたが、「想像力」に長けていると感じる俳優の一人が、山田孝之さんだ。

彼とは、2011年に監督した『荒川アンダー ザ ブリッジ』シリーズ以来、『REPLAY & DESTROY』『ステップ』など、私の作品に幾度か出演してもらっている。

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通常、脚本と呼ばれるものには、場所と時間を示す「柱」と、その状況を説明する「ト書き」と、登場人物が喋る「セリフ」のみが書かれている。

それ以上の情報である、たとえば行間から匂い立つものや、その瞬間の人物の内心などは、演じる俳優や各部署のスタッフが想像力をぶつけ合う。それが映画づくりだ。

セリフを一語一句正しく発するなどは、演技をする以前のこととして、俳優として現場に立っている以上は、脚本に「書かれているが、実際は書かれていない」部分、登場人物のそこに至るまでの歴史や背景、心情や信条など、すべてを背負って立つのが本来だ。

その点、彼はときに、脚本を書いた私以上に、深く役柄を理解していることがある。

映画『ステップ』を撮っているときのことだった。

この映画の原作は、重松清さんの同名小説で、監督と脚本を私が担当した。

若くして妻を喪った男が、男手ひとつで一人娘を育てながら、親子ともども少しずつ成長していく姿を描いている。父親と娘の、10年に渡る姿を追いかける。

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文=飯塚健/映画監督、脚本家

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