言葉の出現頻度の時間的変化を示すグラフを見ても、以前から他の言葉と同等の頻度で使われてきたことがわかる。だが、2020年を境に爆発的に頻度が高くなる。その影響で従来の言葉の頻度がわずかに減少する傾向も見られる。
だがよく見ると、ChatGPTが公開される前から、それらの言葉の頻度がわずかに高くなっていることがわかる。松井医長はそれを、「LLMの登場がまったく新しい言語パターンを生み出したのではなく、既存の傾向を加速・増幅させた可能性を示唆しています」と解説している。
いずれにせよ、現在の医学論文の語彙はAI用語に引っ張られる形になっているのは確かだ。こうした言葉の変化は、時代や技術の進歩に従って変化するものだが、松井医長が心配するのは、安易にAIに頼ることによる表現の変化だ。英語論文の執筆は、英語を母国語としない日本人には負担が大きい。そのため生成AIを活用することで執筆効率が高まり質的改善も期待できる。だが、AIが出力した文章は「そのままでは最終成果物とはなりえません」と医長。「生成された文章を批判的に見直し、適切に軌道修正する能力を養うこと」が医学教育において重要だと提言している。


