今週は夜明けの空を飾る繊細な下弦の月で始まり、新月、流星群、天文学上の冬の到来を正式に告げる冬至へとムードが高まってゆく。「ふたご座流星群」は最大の見ごろを過ぎたが、続いて「こぐま座流星群」が極大を迎える。「クリスマスの星」になぞらえられるほど明るい木星も見逃せない。
街明かりを避け、防寒対策をしっかりすれば、きらめく冬の夜空の下で荘厳な気持ちに包まれる感動的な体験が待っている。2025年12月16日からの1週間の星空の見どころをまとめた。
12月17日(水):細い月、スピカ、水星
日の出の約1時間前、南東の低空に月齢26.6の細い下弦の月を探そう。右上にはおとめ座の1等星スピカが輝き、地平線または水平線まで視界が開けていれば、左下に太陽系最小の惑星、水星が見えるはずだ。
12月20日(土):新月
日本時間12月20日の午前10時43分に、月は新たな節目を迎える。新月となり、夜空から完全に姿を消すのだ。今月最も暗い夜がやって来て、冬の天の川を観察する絶好の機会をもたらす。
街灯や街の明かりの影響のない真に暗い場所で夜空を見上げると、北西の上空にMの字を描くカシオペヤ座から、南東の空で躍動する狩人のオリオン座、それに付き従うおおいぬ座へと、冬の星座をなぞるように優雅な弧を描く天の川が見えるだろう。夏ほど明るくはないものの、銀河の広がりを実感できる。
12月21日(日):クリスマスの星
日没後の東の空で鮮やかに輝く木星は、これから約1カ月間にわたって夜空の主役となる。マイナス2.6等という明るさは、全天で最も明るい星であるおおいぬ座の1等星シリウスに匹敵し、まさに「クリスマスの星」の風格だ。ふたご座の兄弟星、カストルとポルックスといっしょに昇ってきて、夜通し空に君臨する。
実際、木星などの惑星の地球接近は、イエス・キリストの誕生を告げたと聖書に記されている「ベツレヘムの星」の正体を説明する現象のひとつに挙げられている。
12月22日(月):冬至とこぐま座流星群の極大
北半球における天文学上の冬は、日本時間22日午前0時3分に正式に始まる。1年で最も昼が短く夜が長い冬至の瞬間である。日没直後に西の空を眺めると、月齢2.3の細い「二日月(ふつかづき)」が南西の低空に浮かんでいる。月はまもなく地平線に沈み、月明かりのない暗夜が訪れて、こぐま座流星群の観測におあつらえ向きの条件がととのう。
日付が変わってすぐの23日午前1時頃に極大を迎えるこぐま座流星群は、1時間あたりの出現数が最大でも10個程度の小規模な流星群だが、今年は新月の直後とあって観測に挑んでみる甲斐がありそうだ。母天体はタットル彗星(8P/Tuttle)で、北斗七星と北極星の間、こぐま座の「小ひしゃく」の近くに流星が飛び出してくる放射点がある。北の方角を広く見渡して待っていれば、流れ星が夜空を駆ける様子を目撃できるだろう。
今週の星と星座:シリウスとおおいぬ座
1等星シリウスを含むおおいぬ座は今、宵のうちに南東の空に昇ってくる。狩人オリオンに忠実な大きな猟犬の姿を象徴するこの星座には、まるで共に夜空を駆け巡っているような星団がある。シリウスは地球からわずか8.6光年先にあり、猟犬の首元で灯台さながらに鮮やかな青白い光を放つ。周囲をとりまく星々を辿って、大きな犬の輪郭をなぞってみよう。



