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2025.12.16 10:00

AIでインフラ大国アメリカを再び a16z支援の「アンリミテッド」はゲームチェンジャーになるか

Shutterstock.com

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AIを活用する建設スタートアップ「アンリミテッド・インダストリーズ(Unlimited Industries)」が、シードラウンドで1200万ドル(約18億7000万円)を調達した。アンドリーセン・ホロウィッツ(a16z)とCIVがリードインベスターを務めたこのニュースは、AIブーム以前であれば意外性をもって受け止められただろう。だが、売掛金管理や医療事務といったレガシー業務をAIで再構築する動きが定着しつつある中、建設業界を支援する同社への出資は、自然な流れと言える。社会基盤を支える物理的なインフラの領域に、ソフトウェアのようなスピードとスケーラビリティを持ち込んで根本から作り変える「ニュー・インダストリアルズ」の潮流が本格化し始めている。

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アンリミテッドの創業者兼CEO(最高経営責任者)であるアレックス・モドンは、同社が狙う市場について「建設プロジェクトの遅延や高コストに不満を抱えながらも、AIによる変革の恩恵をいまだ受けられていない領域だ」と語る。この空白こそが、彼をこの分野へと駆り立てた原動力である。複数分野のエンジニアであるモドンは、米国エネルギー省傘下の研究所との協働をはじめ、B2B SaaSのスケールやディープテックの商業化に携わってきた。そうした経験の中で、従来型の建設ワークフローが抱える限界に繰り返し直面したことが、アンリミテッド創業の出発点となった。

アンリミテッドは、AIを搭載した設計プラットフォームと、社内のエンジニアリングおよび建設チームを組み合わせることで、従来のコストプラス方式に代わり、固定価格契約を実現している。同社のプラットフォームは、着工前の段階で数万通りの設計案を生成・検証し、コスト・安全性・性能の観点から最適なレイアウトを導き出す。このアプローチにより、これまで数ヵ月を要していた事前設計を数週間へと大幅に短縮した。アンリミテッドによれば、最近の案件では、AI主導の再設計によって設備投資の見積額を半分以下に抑えたという。

アンリミテッドの経営陣は、重工業と製品開発の専門性を備えている。共同創業者のジョーダン・スターンとタラ・ヴィスワナタンは、過去に急成長スタートアップを創業し、1億ドル(約156億円)規模でのエグジットを果たした実績を持つ。同社のマニフェストには、「インフラは単に維持される存在ではなく、人々をインスパイアするものであるべきだ」と記されている。また同社はウェブサイト上で、「建設フェーズにおいては具身知能を備えたロボット技術(身体を持つAIが環境と相互作用しながら自律的に学習・行動する技術)が、設計を驚異的な精度と圧倒的なスピードで現実のものにする」と説明している。

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モドンはインタビューの中で、業界が旧来の慣行にとらわれ続けている現状に繰り返し言及した。「関係者の多くは、ChatGPTのような衝撃的なAI体験をまだ味わっていない。ワークフローは何十年も変わらず、AIが何を可能にするのかを理解できていない」と語る。こうした背景が、アンリミテッドの製品デモをひときわ効果的なものにしている。エンジニアリングチームの前で、膨大な設計パターンを瞬時に評価する機能を披露すると、反応は即座に返ってくるという。「彼らには、まるで魔法のように映る」とモドンは語った。

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編集=朝香実

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