身近な存在でありながら、宇宙よりも謎が多いともいわれる「海」は、昔も今も人々の興味を引きつけ続けている。1950年代になると潜水機器が進化したことによって、人類は比較的自由に海中探査ができるようになった。
この時代の変化に合わせて誕生したのが「ダイバーズウォッチ」だ。これは高い防水性と視認性を備えるだけでなく、潜水経過時間を計測するための逆回転防止ベゼルを備える潜水士のためのツールウォッチである。
そもそも多くのパーツに鉄系素材を使用する機械式時計は、水分に極めて弱い。汗や湿気だけでもパーツを錆びさせてしまうので、時計会社では防水性能の進化が急務であった。
オメガでは1932年に角形二重ケースの「マリーン」から防水性能の探求が始まり、1948年にラウンドケースの防水ウォッチ「シーマスター」がデビュー。そして1957年にダイバーズウォッチとして「シーマスター300」が完成し、これ以降もさまざまな高性能ダイバーズウォッチの開発に力を入れていく。

しかしその一方で、ダイバーズウォッチが持つ視認性が高く、頑丈であるというポテンシャルにも注目し、タウンユースでも楽しめるダイバーズウォッチの開発も進めた。
2005年に誕生した「シーマスター プラネットオーシャン」は、600m防水というハイスペックモデルながら、華やかなオレンジを差し色に用いたり、ケースの斜面にポリッシュ仕上げを取り入れたりと、装飾性にもこだわることでスタイルと機能性を両立し、海中だけでなく、オフィスや高級レストランもフィールドとする「ラグジュアリー・ダイバーズウォッチ」としての地位を確立する。
2025年に登場した「シーマスター プラネットオーシャン」は、さまざまなアップデートを重ねた第4代目で、これまで以上にスタイルと機能性を高めた。
最大の特徴は、600mという防水性能を維持しながら、ヘリウムガスエスケープバルブを廃したことにある。ヘリウムガスエスケープバルブとは、深海で作業する潜水士が用いる飽和潜水の際に時計内部に侵入してしまったヘリウムガスを排出するためのバルブのこと。「シーマスター プラネットオーシャン」では、このバルブによって“プロツール”であることを強く主張していた。
しかし、2019年に発表した6000mダイバーズ「シーマスター プラネットオーシャン ウルトラディープ」にて、ヘリウムガスエスケープバルブ不要の高気密構造を実現したため、新しい「シーマスター プラネットオーシャン」でもバルブをなくし、洗練されたケースフォルムに仕上げることが可能になったのだ。
またケースサイドのポリッシュ面を広げることで、よりきらめきのメリハリを強めた。そしてエッジを生かしたケースに合わせて、ブレスレットもフラットでシャープな造形に変更。3連コマの両端がヘアライン仕上げで、中央コマがポリッシュ仕上げとなり、華やかさが増している。



