米国で女性の雇用と昇進に逆風が吹いた一年において、「世界で最も影響力のある女性100人」は、慈善活動やAI、金融、エンターテインメントの分野で力を発揮し続けた。
この夏、グラミー賞受賞アーティストのビヨンセ・ノウルズが、興行収入4億ドル(約628億円)を記録した『カウボーイ・カーター・ツアー』の序盤で、アメリカの国歌『星条旗』を歌い上げた。彼女はポール・マッカートニーによる公民権運動のアンセム『ブラックバード』の歌詞の一部分、「You were only waiting for this moment to be free(あなたは自由になるこの瞬間を待っていただけ)」を引用して曲を締めくくり、ケンドリック・ラマーとのコラボレーションでプラチナ認定された楽曲『フリーダム』へとつなげた。彼女が歌っている間、背後の巨大スクリーンには「Never ask permission for something that already belongs to you.(すでにあなたのものである何かについて、決して許可を求めてはならない)」という文章が映し出された。
わずか数分間で、ビヨンセはカントリーミュージックにおけるオーナーシップ、公民権、そして女性が力を取り戻すこと(同ステージセット内の別のスクリーン映像でも示されていた)について、自らの考えを表明した。同時にそれは、フォーブスの「世界で最も影響力のある女性100人」のリストにこれまで15回登場している人物からのメッセージとして、2025年、女性が逆境の中で力を失ったと感じている人々に響いた。
2025年は多くの指標で見ても、女性にとって厳しい年だった。アメリカでは、1月から10月の間に約50万人の女性が労働市場から離脱し、史上最大の減少幅になった。マッキンゼーと、女性のキャリアを支援する非営利団体、リーン・インの調査によると、女性従業員の昇進支援を高い優先事項としている企業はわずか54%。たった4年前には、同割合が90%に上っていた。
一方、国連女性機関(UN Women)は、オンライン上での女性蔑視の増加について警鐘を鳴らしている。6月には「マノスフィア(男性中心のネットワークコミュニティ)」の有害性が高まりつつあり、広範な文化に浸透して、女性への態度に深刻な悪影響を与えていると報告した。この警告は11月、トランプ大統領が女性ジャーナリストに対して「静かにしろ、ブタ野郎」と言い放ったことで現実化した。
しかし、女性たちが黙っていないことを示す兆候はたくさんある。米国上院における女性議員は過去最多となり(2020年以来の女性議員の最多数更新)、前例のない数の女性が州知事に就任した(1月から14人)。そして、自力で財を成した女性ビリオネア(資産10億ドル以上の富豪)も世界で114人に上り、女性たちは記録を更新している。
「世界で最も影響力のある女性100人」は、自らの役割を大胆に受け入れている。今回、初登場で3位にランクインした高市早苗は、GDP(国内総生産)4兆ドルの国家、日本を率いる史上初の女性首相となった。彼女はすでに大胆な発言を連発しており、最近では人気アニメのセリフを引用し、物議を醸した。「今日、私は『進撃の巨人』の有名なセリフで締めくくりたいと思います。‘Just shut your mouths. And invest everything in me!!’(いいから黙って、全部オレに投資しろ!)」



