世界中の経済学者や政策立案者から、中国の消費支出拡大を求める声が日々上がっている。中国のGDPに占める消費支出の割合は50%未満で、約3分の2を占める米国をはるかに下回る。この論理は、現在の支出水準が中国企業のビジネスチャンスを制限しているという考えに基づいている。
しかし、中国を拠点とするベテランの経営学者で、現在中国の杜克昆山大学(Duke Kunshan University)の副学長を務めるジョン・クエルチ氏によれば、現在の水準でも適切なセグメントに目を向ければ、国内外の企業が中国の消費者向けビジネスを拡大する余地は十分にあるという。そして、それは企業がますます完成品ではなく、サービスへの消費支出に注目すべきことを意味する。
「文化や遺産、メディア、エンターテイメント、スポーツイベント——これらのサービスベースの体験や旅行はすべて政府によって奨励されており、実際に消費者に届いている」と、クエルチ氏は電話インタビューで上海から語った。
「サービス分野に目を向ける欧米企業にとって、大きなチャンスがある」と彼は言う。「もちろん中国政府は、何が提示され、実施されるかについて非常に関心を持つだろう。しかし、今日ではどの国でもそれは対処していかなければならないことだ」
中国は改革開放初期の農業国だった頃から。大きく変化した。統計調査データプラットフォーム、Statista(スタティスタ)のデータによると、1980年には5分の1未満だった都市部人口は、現在67%に達している。「中国人の大半はもちろん、戸建て住宅に住む米国の消費者と比べ、比較的小さなアパートに住んでいる。その結果、中国の住居には複数のテレビセットや様々な大型で高価な家電製品などを置くスペースが単純に不足している。したがって、住居の平均的な広さによって、家庭用電化製品への消費は比較的制限されている」とクエルチ氏は述べた。
中国の王文濤商務相は7月、中国共産党が発行する「求是」誌の記事で、2024年の小売サービス売上高の成長率が6.2%となり、小売商品売上高の伸びを3ポイント上回ったと指摘した。「国際的な傾向から、一人当たりのGDPが約1万5000ドルに達すると、一般的に各国で商品ベースからサービス主導の消費への加速的な移行を経験する。中国の一人当たりGDPが1万3000ドルを超えた今、我々はサービス消費の急速な成長段階に入っている」
クエルチ氏が挙げた有望な成長分野の一つが、旅行だ。「私は中国をほぼ毎週末旅行しているが、私が搭乗するどのフライトでも常に最年長者だ。私の観察では、週末の飛行機に乗っている人々の大多数は、30歳未満だ。彼らは通常、友人や親戚と再会するため、あるいは博物館、ランドマーク、景勝地やコンサートを訪れるために、中国の別の都市に旅行している」と彼は言う。
「中国の若者たちが、物質的な商品への支出よりも、より感情を揺さぶる体験に消費を傾けていることが見て取れる。こうした消費の多くは、生産財部門ではなく、サービス部門で発生している」
時代の変化に注意を払っている外国企業や組織は、恩恵を受けている。例えばスポーツでは、NBAが10月にブルックリン・ネッツとフェニックス・サンズによる2つのエキシビションゲームをマカオで開催。チケットは高額にもかかわらず完売したと、クエルチ氏は指摘した。
オーケストラのイベントも好調だ。「特に米国よりもヨーロッパから、多くのオーケストラが来ている。特にドイツは最高のオーケストラを派遣して、中国でソフトパワーと親善を生み出している」と彼は言う。



