暮らし

2025.12.12 17:00

「たくさんの小さな喜び vs 数回の大きな喜び」人を幸せにするのはどっち?──心理学者の回答

日々のささやかな喜び──マイクロジョイは、その限りの幸福感では終わらない。あらゆる意味で人生における「幸福の燃料」となる(Shutterstock.com)

今日から始める──マイクロジョイ習慣の実践法

簡単で単純に見えることほど実行が難しいことがある。いつでもどこからでも始められると思うと、かえって最初の一歩が踏み出せなくなってしまうのだ。ここではそんな「最初の一歩」に最適な実践法を紹介してみよう。

advertisement

・小さな楽しみを毎日2つ、スケジュールに組み込もう。時間は5~15分でOK。大切なのは、馴染みのあることと新しいことをバランスよく組み合わせることだ。たとえば、朝バルコニーで新しいブレンドのコーヒーを試す(携帯電話はオフに)、仕事の休憩中にお気に入りのアーティストの新曲を聴く、など。

・毎日1回、「味わう」練習をしよう。その日気づいたほのかな喜び(食べ物の味、庭の植物の色、アロマキャンドルの香りなど)を3つ挙げ、心のなかでゆっくりと味わう。

・感謝リストを作り、毎日1~3つ項目以上記入しよう。リストは頭のなかではなく、実際に書き出すことが大切。日記でもアプリでもいいので、いつでも見返せるようにしておく。

advertisement

・1日の終わりに、小さな成功体験を1つ書き留めよう。前述の「進捗の法則」が強化され、モチベーションの維持につながる。

これらは、日常生活のマイクロジョイを増やす(あるいは意識する)ために誰もが実践できる、低コスト・高リターンの「心の習慣」だ。この習慣を続けることでマイクロジョイの効果は広がり、「大きくとも一時的な高揚感」を上回る長期的な幸福感がもたらされる。

とはいえ、はすばらしい幸福感をもたらすマイクロジョイ習慣も、決して万能薬ではないことは知っておきたい。重度の疾患には、体系的な治療や薬、トラウマ治療が必要なこともある。その場合は、マイクロジョイを治療の一部にとり入れると効果を下支えできる。

なお、マイクロジョイを現実逃避に使うのはお勧めしない。本来向き合うべき人生の課題から目を背けてマイクロジョイにふけっても、人間的成長にはつながらないからだ。よって、「気分のリフレッシュ」との境目は難しいが、うまくバランスをとる必要がある。マイクロジョイは問題を先延ばしにするためではなく、心の回復力や思考力を養うためのものであることを意識しておこう。

人はしばしば、長年待ち望んだ昇進やマイホーム、憧れの肩書きといった「晴れやかさ」を追い求め、それを機に幸福感に包まれた人生が訪れると思いがちだ。もちろんそういった節目は大切だが、多くの研究によって、真の幸福とは、私たちが意識的に育み、味わう、日々の「小さな喜び」の積み重ねであることが明らかになっている。

だからこそ、メンタルヘルスの向上を望むなら、マイクロジョイを「心への投資」のように捉え、小さな喜びをこまめに投資し、「利益」を増やしていくといい。日々、マイクロジョイに気づき、味わう習慣は、年に1度程度の大きな達成体験よりも、はるかに大きな幸福感を生み出してくれるはずだ。

マイクロジョイ習慣は、私たちの人生を変えるほどのベネフィットをもたらす。科学的に裏づけされた「WHO-5 精神的健康状態表」で、あなたの人生にマイクロジョイが必要かチェックしてみよう。

forbes.com 原文

翻訳=猪股るー

タグ:

advertisement

ForbesBrandVoice

人気記事